9話:泣く子にあげるものは?

『我々の名は聖別の火!前皇帝アレクサンドルの血を引くニコライ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフへの断罪を!!』

機体のスピーカーから発せられる、熱狂に浮かされた声明が爆音の中に溶け込んでいく。

瓦礫と粉塵が舞う視界の最悪な状況下で、セロニカが迷いなく路地裏を駆けて避難所へと向かっていく。

[120m先をミギホウコウ.オチツイテクダサイネ.パニックニナラナイヨウニ]

スマートウォッチは皮肉なほど冷静にホログラムを出し続け、無機質な機械音声を流しながら避難案内をする。

だが、現実はその案内を嘲笑うかのように崩落を続けた。

ドォオン!

セロニカ 「キャ!!」

至近距離での着弾。

爆風に煽られながらも、彼女は必死に足を動かす。

大通りでは、重厚な駆動音を響かせるリグマシーナギアが、組織の旗を掲げて叫び続けていた。

アレクセイ

「なんなんだよ、なんなんだよ、なんだよ、なんなんだよなんなんだよ!!」

金髪の少女とその母親らしき人物が、銃を持ったリグマシーナギアの前に立ち尽くしている。  

あぁ、空港に居た少女だ。

何かを話してる。母親が必死に命乞いをしてるのか、それとも子供を庇っているのか。

ハッチが半開きになった暗いコックピットの中、テロリストの顔が見える。

大義という名の自己洗脳に染まりきった、恍惚とした若者の顔だ。

ぁ…………声が聞こえた。

『地球にばっか資源を集めるからこうなるのだ!貴様ら逃げ込んだ市民も同罪だ!!』

引き金が引かれる直前、衝撃で少女のバッグからたくさんの飴が溢れ出した。

石畳の上を転がる色とりどりの包み。

この後舐めるつもりだったのか、それとも貰ったように誰かにあげるつもりだったのか。

そんなささやかな願いは、銃声一つで帰される。

貧乏人の反抗、レジスタンス、聖別、生活のお金を兵器を買うお金に変える。

あまりにも愚かしい一幕。

狭い路地裏へ滑り込み、三人は壁に背を預けて荒い息を吐く。

セロニカ

「ねぇ、、2人ってユーリとアレクセイって言うんでしょ?、、学生証さっき書いてあったよね、これ終わったら、、デートしてね」

死の恐怖を、無理やり日常の記号で塗り潰そうと切実に足掻く。

ユーリ

 「はは、、それ今言う?」

乾いた笑いを漏れる、。

アレクセイ

 「、、っ、、、、はは、、、、ラノベの死亡フラグじゃんそれ、、そんな事、、言うなよ、、」

日常とはいとも容易く破壊させられる。

たくさんあった飴は側溝へと流れ落ちていく。

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