ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
鼓膜を直接引き裂くような轟音が、世界のすべてを塗り替えた。
平和の象徴であったはずの巨大なビルが、内部から溢れ出した業火によって中腹からへし折れ、あまりにも呆気なく、無慈悲に、何万トンもの物理的な質量となって弾け飛ぶ。
華やかな夕闇の街は一瞬にしてオレンジ色の閃光に飲み込まれ、爆風がショーウィンドウのガラスを粉々に砕きながら、通りにいた人々を木の葉のように吹き飛ばした。
アレクセイ
「は!?」
あまりの事態に、アレクセイの処理は追いつかない。
視界が土煙と火の粉で染まる中、横に吹き倒された親友が、焦点の合わない目で虚空を見つめていた。
ユーリ
「、、、、、、、、、、、、、どういう、、、、、こと?」
ゥーーゥーーーーーゥウウウーーー!!!
日常を切り裂くように、けたたましい警報が鳴り響く。
アレクセイたちを含め、周囲で倒れ伏す人々の腕につけられているスマートウォッチが一斉に震えはじめ、ホログラムの緊急避難用の経路図が無機質に空中に浮かび上がる。
システムだけが正常に作動し、現実の人間たちはパニックで身動きすら取れていない。
ブゥゥゥブゥゥゥ!!
端末が激しく震え危険をつたえてくる。
その警告音にハッとしたアレクセイが顔を上げた瞬間、彼の異常な反射神経が、頭上から降り注ぐ巨大な「」を捉えた。
アレクセイ
「は?、、は!、、ちょっ、、そこあぶな!」
アレクセイが急いで声を上げるが、遅すぎた。
ビルの一部が巨大なコンクリートの塊となって崩落し、目の前で起こる現実に呆然とし、逃げることすら忘れて立ち尽くしていた人々の上に、容赦なく降り注いだ。
悲鳴を上げる間すらない。
ただ、肉と骨がひしゃげる凄惨な音だけが、土煙の向こうで響いた。
ドォォオオオン!!
轟音しか響かない世界。
やがて上がり始めた絶望の叫び声と泣き声を、さらに無機質な暴力――けたたましい銃声の音が上回っていく。
セロニカ
「こ!!こっち!!こち、、こっち来て!!!」
粉塵の中から、先ほどまで美少女を自称してはしゃいでいた赤い髪の少女が、顔を煤だらけにしながら手を振っている。
彼女もまた、突然放り込まれた戦場にパニックを起こしながら、生存本能だけで路地裏へと駆け込もうとしている。
ユーリ
「アレクス!!!!行くよ!!」
我に返ったユーリが、血相を変えてアレクセイの腕を強く引く。
だが、アレクセイの足はコンクリートに縫い付けられたように動かない。
彼の視線は、先ほど瓦礫に押し潰された人々の下敷きから流れ出す、生々しい赤い染みに釘付けになっていた。
アレクセイ
「!、ぇ、、いや、、でもあそこに人が、、、、ぃま、、いま、、、あそこ、、ひと、、ひとが、、きゅ、、きゅじょ、、きゅうじょ、、、」
ユーリ
「馬鹿!!現実見ろ!!!無理だよ行くんだよ!!」
ユーリは、アレクセイの思考がフリーズしている間に彼の手を力任せに引き、セロニカが路地を走っていくのを追いかけていく。
背後で、地響きを立てて何かが通りに降り立った。
リグマシーナギア。
元々は広大な畑を耕す、農業用に開発された機体。
味気ない農耕用機械に飽きた人々が、機能美と浪漫を求めた先の機械。
だが、その強靭な駆動系は、皮肉なことに人を殺すのに最も適していた。
農耕用のクワで人を殺す様に、そのリグマシーナギアには巨大な銃が取り付けられていた。
『我々の名は!』
機体の外部スピーカーから、ヒステリックで狂気に満ちたテロリストの声明が、サイレンと爆音を切り裂いて街中に響き渡る。
背後で無差別に放たれる銃弾。
次々と倒れていく見ず知らずの人々。
自分は安全な場所にいて、退屈な日常が明日も続くと思っていた。
その傲慢な錯覚が、瓦礫と共にガラガラと崩れ落ちていく。
走りながら、アレクセイは肺の底から搾り出すように、ただ。
アレクセイ
「意味わかんない意味わかんない意味わかんない!!なに!!なんなの!馬鹿かよ!なんなんだよ!!」
