66話:今日は花火が多い

アレクセイ

(あと13機、、、、、)

呼吸を止め、酸素不足による耳鳴りに耐えながら、アレクセイは冷静にターゲットを絞り込む。

だが、膝の間にいるセナの怒声が、その集中を無理やり引き裂いた。

セナ

「早く吸いなさいって!この液体は飲んでも大丈夫なのよ!すぐさま蒸発するから鼻と口からずっと出続けるし呼吸も出来るすっごい液体なのよ!!」

アレクセイ

(、、、、うるさい、、、)

液体に満たされたコクピットの中で、アレクセイは顔を顰めてセナを睨みつける。

生理的な嫌悪感と、溺死への本能的な恐怖が勝り、どうしてもその一歩が踏み出せない。

セナ

「ほらぁ!こうやってあんたが加速しても私は動かないほどの高密度の液体で」

ピピッ…………ディディディディリリリリリリ!!!!

その時、鼓膜を劈くようなアラートが狭い機内に鳴り響いた。

セナ

「ロケット!?そんな兵装積んだら」

遥か上空、ハジコの操る巨大な試作機から、白煙を引く無数のミサイルが放たれた。

それは獲物を追い詰めるように、鋭い軌道を描いてヴェルクへと殺到する。

アレクセイ

(、、、チッ、、、)

アレクセイは覚悟を決めた。操縦桿を限界まで引き絞り、ヴェルクの機首をエアドームの頂点へと向ける。

セナ

「わ、、ちょちょちょ、、それ以上加速したらいくらアンタでも肺潰れて死ぬって!」

キィィン!

機体から発せられる駆動音が、可聴域を超えて高周波の悲鳴へと変わる。

速度計の電子メーターはマッハの領域へと突入した。

パキン…パチ………パリ…………バババン!!!

ヴェルクが街の上空を通過した瞬間、凄まじいソニックブームが地上の建物を襲う。

街中のガラス窓が一斉に砕け散り、宝石のような破片が夜の街に降り注いだ。

アレクセイ

(ぐ、、呼吸が、、、、、、)

肺が押し潰されるような圧迫感。

アレクセイは意識が遠のきかけるのを必死に繋ぎ止め、どこかの廃材置場で拾い上げた長い鉄の棒を槍のように突き出した。

ヴェルクはバレルロールを開始する。猛追するミサイルを紙一重で回避し、互いに衝突させて空中で巨大な火花を相殺させた。

アレクセイ

(、、、、、、、つ、、、墜落、、、更に加速!!)

失速の恐怖を払拭するように、アレクセイはさらにスロットルを開こうとする。

セナ

「馬鹿!!それ以上加速したら街の建物が倒壊するっての!!」

セナが叫びながら、アレクセイの腕の隙間から強引にメインモニターを操作した。

彼女の指先が神速でコマンドを打ち込み、制御不能になりかけたヴェルクの挙動を、強制的に自動航行モードへと書き換えていく。

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