65話:速度の壁は肉体

アレクセイ

「数、17機か?、、、、」

メインモニターに映る敵の姿。

敵の陣容を冷静にカウントするアレクセイの横で、膝の間に挟まったセナの呼吸が劇的に乱れ始めた。

セナ

「、、、っ、、、、カハッ、、、、」

アレクセイ

「、、、、!?、、、、、どうしたの、、、セナ」

セナ

「多分加速、、、、内臓がついていかなくて、、かな?」

アレクセイ

「、、、、、、む、、、そうか」

ヴェルクの爆発的な機動力に、生身の体が悲鳴を上げている。

アレクセイの顔に懸念が走るが、セナは荒い息をつきながらもコンソールを叩き続けた。

セナ

「多分大丈夫」

アレクセイ

「何が」

セナの手元でサブモニターが猛烈な勢いで書き換えられ、無数のコードが滝のように羅列されていく。

セナ

「、、、へぇ、、C言語、、、随分と古い、、、けど良いわね、、天然のファイアウォールよ、、」

セナの指が躍る。彼女は苦痛を意志の力でねじ伏せ、機体の深層システムへと潜り込んでいく。

アレクセイ

「加速するよ」

セナ

「わかった」

セナは覚悟を決めたようにアレクセイの胴に思い切り抱きつき、肺の空気を一気に吐き出した。

ゴゥウウウウン!!!!

ガァン!!!

機体がさらに一段階上の速度域へと跳ね上がる。衝撃波と共に、一体のドローンを粉砕した。

アレクセイ

「まず一機、、、、、、、、ん?、、、、ただ歩くだけ?、、、、」

セナ

「かはっ、、、、はぁ、、、はぁ、、、、う、、、ぇ、、気持ちわる、、、、」

アレクセイ

「大丈夫?」

セナ

「だいじょ、、ぶ、、、よ!!」

パチン!

セナが特定のコマンドを叩くと、中央の足元から半透明の謎の液体が溢れ出してきた。

瞬く間にコクピットの下部を満たしていく。

セナ

「これそのまま吸い込んで!問題無いわ吸い込んで」

アレクセイ

「え?、、、ゎ、、、ちょ、、、溺れ、、、、がっ、、、」

セナ

「すううううう、、、、はぁぁぁ、、、、、よし、、、、」

セナは躊躇なくその液体を肺に吸い込み、驚異的な適応を見せた。

呼吸が安定し、彼女の顔から苦悶の色が消えていく。

アレクセイ

「む、、、、、」

アレクセイは液体を吸い込むことを拒否し、驚愕の表情でセナを見つめる。

セナ

「吸いなさいって!肺が潰れるわよ!」

アレクセイが必死の形相で首を横に振る。

アレクセイ

(無理無理むりむりむり!!!!)

死への恐怖より生理的な嫌悪が勝った。アレクセイは息を止めたまま、力任せに操縦桿を押し込む。

ゴウウウウン!!!

ヴェルクが街の影を縫うように疾走する。

ガンッ!ドン!バン!

三つの火柱が夜の街に咲いた。

息を止めた極限状態のまま、アレクセイは暴力的な手際でドローンリグマシーナギアを次々と残骸へと変えていった。

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