64話:規律は自身を縛る。

バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

巨大で不恰好なリグマシーナギアの原型機から、不快な射出音が連続して響いた。

親機とは対照的に、ヴェルクと同サイズ程度まで小型化された機体が、次々と夜空へ放たれていく。

アレクセイ

「、、、、アレは?」

アレクセイがヴェルクの機首をわずかに向け、拡大された計器に映る影を睨む。

セナは膝の間でコンソールを覗き込み、即座に分析を口にした。

セナ

「しらない、、、多分ハジコが付けたやつ、、見る限り人間は乗ってないわね、無視してあの大きいの倒せば良いわ」

アレクセイ

「あの大きいやつの中にハジコはいるの?」

セナ

「居ないわ、、遠隔よアレは、、、人が乗る前提じゃないドローンの延長だもの」

アレクセイ

「、、、、、、、、壊しても人は死なない?」

アレクセイの声に、張り詰めた何かが混じる。

セナ

「死なないわ」

アレクセイ

「そう」

その一言を最後に、ヴェルクはさらにエンジンの唸りを上げ、超加速をもって眼下の街へと下降していった。

セナ

「!、、、街に降りてるわよ!」

予想外の針路に、セナが身を固くする。

アレクセイ

「あの小さいリグマシーナギア、、人は居ないんだろ、、でも襲うんだろ、、、人間にとって暴力に貴は無く、賎は無く、命を脅かす災害と変わりはない、、、だからこそ、、人を守る為に振るうのみ赦された能力である、、、それが母の言葉」

セナ

「いきなり演説?」

至近距離で囁かれるアレクセイの言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。

アレクセイ

「母さんが言ってた、後で死ぬほど後悔するから自分の身を守る為だけに力を振えと」

セナ

「、、、、、そうね自分が大事だもの」

セナは冷ややかに応じた。だが、アレクセイの手は操縦桿を離さない。

アレクセイ

「だけど、、、、もし守れる力があるのなら俺は守りたい、、、ここの人の事は知らない、、でもキャサリーが育った街である事は確かだ、、キャサリーにもセロニカやユーリみたいな友人が居る、、、」

セナ

「、、、、、、、、余計な善意よ、、、それは」

セナの制止を切り裂くように、ヴェルクが街の舗装路へと肉薄した。

ガァアアン!!!!

地響きと共に着地した衝撃を利用し、アレクセイは路上に転がっていた長い建築用鉄骨を一瞬のうちに拾い上げた。

超加速の慣性をそのままに、漆黒の機体は鉄骨を巨大な槍へと変え、降下してきたドローンリグマシーナギアの一機へ真正面から突き刺した。

アレクセイ

「、、、、、、、余計とか足りないとか知らないよ!!!、、、人が死なない事を願って何が悪い!!人が死なない様にして何が悪い!!!!」

鉄骨に貫かれたドローンが爆ぜる光の中で、アレクセイの咆哮がコクピットに木霊する。

セナ

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、ぁ、、、、っそ、、、、」

アレクセイの膝の間で、セナはただ、その背中に圧倒されていた。

余計な善意と切り捨てるにはあまりに重く。

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