40話:与えれなかった母性はどこへ消える?

マチル

「はい、辞め辞め、、飯食って落ち着けお前らは」

重苦しくなりかけた空気を断ち切るように、マチルが短く声をかけた。

その一言で、アレクセイとユーリは視線を切り離し、隅で手を振るデニスの元へと無言で歩き出す。

キャサリー

「む、、私の一大事なのよ!」

一人取り残された形のキャサリーは、憤慨した様子で立ち上がり、マチルに食ってかかった。

だがマチルは動じず、手近な皿を指差す。

マチル

「そうかもしれんがご飯を食べなきゃ思考も出来ないぞ」

キャサリー

「、、、、、む、、、あなたの名前は?」

毒気を抜かれたようにキャサリーが問いかける。

マチルは口角をわずかに上げ、作業の手を止めずに答えた。

マチル

「自己紹介が遅れたな、、私がこの船の船長マチルだ」

名乗ると同時に、マチルはキャサリーの口にサンドイッチを無理やり詰め込んだ。

驚く暇も与えず、コンソールを叩いて展開させたエアクッション型の椅子へ、抗議の声を上げる少女の体を無造作に投げ入れる。

キャサリー

「ん、、む、、、んぐ、、、、、、、、、、、ぁ、、美味しこれ、、、、ふぅん、、、ねぇ、、優しさは何?」

不格好に椅子に沈み込みながらも、咀嚼を終えたキャサリーが不意に問う。

マチルは自身の椅子に腰を下ろし、紅茶粉をお湯で溶かしながら、立ち昇る湯気の向こうを見つめた。

マチル

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、思いやりだな」

キャサリー

「私だって思いやってる、、、、、」

クッションの柔らかな感触に身を任せ、キャサリーが小さく零す。

その視線の先では、アレクセイとユーリがデニスと共にホログラムのニュース画面を囲み、時折淡い光に照らされながらサンドイッチを頬張っていた。

マチル

「どうさな、報われる事を求めた時点で優しさじゃないのさ」

キャサリー

「じゃあ人はどうやって優しくすればいいの?感謝されたいし、ジュース奢られたいしお菓子とか貸し一つとかにしたいわよ」

あまりに等身大なで、計算高い年相応の本音。

マチル

「ふふっ、、若いな」

キャサリー

「そりゃピチピチの18歳学生ですから!」

マチル

「優しさか、優しさ、、、そんなもんはないのさ、、でも何も見返りもなく助ける事を人は期待するし、自分が助けられた事はマイナスから0になっただけでプラスじゃない、助けて貰うのは当然だと言いたくなるのが人間なのさ」

マチルは冷めた紅茶のカップを揺らし、静かに言葉を重ねる。

キャサリー

「助けを求めずに自分でやれ?、、、む、説教って訳?年老いた人はそうやっていつも言いたがるわよね、、」

マチル

「言いたがる、ふふ、そうなんだろうな、、大抵の大人は色気を出してしまうからムカつくんだよ」

キャサリー

「色気?、、、えっちなやつ?」

マチル

「何か施してやろうという上から目線さ」

マチルは自嘲気味に笑い、手元に視線を落とした。

キャサリー

「じゃあどうすれば良いのよ」

マチル

「真剣に頼めば良いさ」

キャサリー

「、、、、、、、、、なんであなたはここまで私に親身にしてくれる?」

真っ直ぐなキャサリーの眼差し。マチルは僅かに目を細める。

マチル

「楽しいから、、、それだけさね、、、、、、レジスタンスとして活動してたのは20年前、、」

マチルの節くれだった手が、キャサリーの頭に触れ、ゆっくりとその髪を撫でた。

マチル

「、、、、、、、、、、、、娘が育ってたら、、、って話さ、、、人に優しくされた理由を求めても下心しかないんだ、、、てきとうに聞き流しておけばいい」

キャサリー

「、、、、、ん、、、、、、ありが、、とう、、、ございます」

少女の顔から険が消え、しなやかな動作で椅子から立ち上がる。

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