暗い地下道の閉塞感を抜け、三人の目の前には広大なコンクリートの空間が広がっていた。
非常灯の鈍い赤と、どこからか漏れ出す薄暗い光が、巨大な影をいくつも作り出している。
ユーリ
「アレクス?ここであってる?」
アレクセイ
「うん、、あってる、、」
セロニカ
「それにしてもここなんなんだろ、、地下駐車場?とか?」
セロニカが周囲を見渡しながら首をかしげる。
かつては整然としていたであろうその場所は、今は静まり返り、冷たい殺気を孕んでいた。
アレクセイ
「多分港から運ばれてきたトラックが一時的に休むとこ、この時期は学生が来るからここは解放されてドローン空輸が多くなるんだ」
セロニカ
「へぇ、、、ん?、、、じゃああの、、、トラックって」
セロニカが指差した先、闇の中に巨大な輪郭が沈んでいた。
アレクセイ
「やっぱりあった」
セロニカ
「やっぱり?」
ユーリ
「街で昨日見たやつ、、、」
コンテナの隙間から覗く、重厚な金属の脚。
それは平和な学園都市にはあまりにも不釣り合いな、暴力の塊だった。
アレクセイ
「リグマシーナギアだあれ、、」
セロニカ
「私!使ったことあるよ!実家で! 」
ユーリ
「じゃあ僕たちと一緒だね、僕たちも使ったことあるよ」
アレクセイ達はなんの気無しに近づいていく。
互いに呼び名を変え、少しだけ心を通わせたことで、彼らの警戒心はわずかに削がれていた。気が緩んでいた、ただそれだけ。
ユーリ
「セッちゃん、アレクス、、、、、、これ、、、ぅ、、、もしかして」
ユーリの足が止まる。ライトが照らしたアスファルトの上には、どす黒い液体が広がっていた。
アレクセイ
「血だ、、、、、、なんで?、、、渇いてる、、カピカピだ、、、6時間以上前に何かあったんだ」
アレクセイが指先でその跡をなぞる。昨夜、誰かが繰り広げた死闘の残滓。
セロニカ
「え、、じゃあどうするの?リグマシーナギア動くのかな、、、」
アレクセイ
「目的はそっちじゃなくてトラックの方、、トラックを運転してココを脱出しよう」
ユーリ
「なるほどね」
アレクセイとユーリはトラックの中に入り、色々と調べていく。
計器類を指で弾き、システムの反応を確認するアレクセイの横顔には、冷静さが戻りつつあった。
アレクセイ
「キーは差しっぱなしだ、、動かせるな、、、」
セロニカ
「スマートキーじゃないんだ、火星だと電気自動車が主流なのに」
アレクセイ
「スマートキーは電波で開けれるからね、案外アナログのが強固になる」
ユーリ
「うん、タイヤもパンクしてないよ!動けそう!」
アレクセイ
「よし、、じゃあ行こ、、」
ガチャッ……ブゥン!!……グロロロロロ………
アレクセイがキーを回すと、古い心臓が脈打つような重低音が駐車場に響き渡った。
アレクセイ
「いけそうだよ、ユーニャ、せっ、、、、セロニカ」
セロニカ
「やれやれアレクスはウブだ事」
アレクセイ
「うるさい」
頬をわずかに赤らめるアレクセイに、セロニカが意地悪く笑う。
ユーリ
「じゃあ行こう!外へ!」
その言葉が合図だった。
ドォォオオオン!!
鼓膜を揺らす轟音。
彼らの希望を砕く音が聞こえる。
駐車場の入口の壁が爆散し、コンクリートの破片が牙となって降り注ぐ。
煙の向こうから、巨大な金属の怪物が姿を現した。
テロリスト達のリグマシーナギアが目の前に現れる。
赤く光るモノアイが、トラックの運転席に座る三人を、逃がさぬ獲物として吸い込まれる。
