18話:絆

暗い線路。

足元に転がるバラストが、歩くたびにジャリ、ジャリと乾いた音を立てる。

アレクセイは魂をどこかに置き忘れたような足取りで、ただユーリの手に引かれるまま進んでいた。

ユーリ

「、、、、この先に一体何があるのかな、、、」

深い闇の先に視線をやり、ユーリが独り言のように呟く。

セロニカ

「ここ進んでどこにいくの?」

ユーリ

「アレクス、予定は?」

アレクセイ

「この先、港、船、」

アレクセイの声には抑揚がない。感情の死んだ、ただの音声データのような響き。

ユーリ

「わかった、、」

ユーリは何も言わず、その冷たくなったアレクセイの手を強く引きながら歩いていく。

セロニカ

「ねぇ、、アレクセイはどうしたの?」

後ろを歩くセロニカが、不安そうに二人の背中を見つめる。

ユーリ

「さぁ?、、、、アレクセイは目が良いからさ、、見たくないものも見えてしまうだけ」

高い知能も、鋭い視力も、この地獄においてはただの呪いでしかない。

沈黙が三人を包み込むのを恐れるように、セロニカは…

セロニカ

「、、、、、、そうなんだ、2人は幼馴染?」

ユーリ

「うん、6歳から一緒だね」

セロニカ

「へぇ、やっぱ地球って自然が豊富なの?火星って大規模農場ばっかで海とかないのよね、魚食べたことある?、私こっちきて初めて生魚食べたよ!」

ユーリ

「自然、まぁ豊富なんじゃない?セロニカは家族と離れて寂しくなかった?」

セロニカ

「うーんどうだろう?私3女だし、そこまでかなぁ?弟も妹も居るし」

無理に明るく振る舞うセロニカの声が、トンネル内に反響する。

ユーリ

「学園でやりたい事あった? 」

セロニカ

「やりたい事、うーん、、そうだなぁ、、イケメンと恋愛して玉の輿!じゃない?やっぱ!」

ユーリ

「ふふっ、、セロニカらしいや」

絶望的な状況に似つかわしくない、あまりにも俗っぽく、それでいて尊い願い。

セロニカ

「ユーリはやりたい事あったの?」

ユーリ

「、、,,,やりたい事か、、、ふ、、アレクセイが輝ける様にしたかったんだ、、」

セロニカ

「輝ける?」

ユーリ

「アレクセイは天才なんだよ、、ほんとに、、でもアレクセイはてんで子供でさ、、ずっと故郷が良いって言うんだ、、だから、、僕がいくから寂しいから来てって、、無理やりね、、コイツ成績一位なんだよ?」

セロニカ

「え?オーストラリアで?」

ユーリ

「さぁ?16歳から18歳なら全員無料だけど、試験があったでしょ?あれコイツ一位なんだ、、僕は13位、、、、ふっ、、、、馬鹿らしいね、、、こんな事なるなんて」

火星、地球、月。

あらゆるコロニーから天才、秀才が集まったはずのこの学園都市で、その頂点にいた少年の今の姿。

セロニカ

「アレクセイ、、、ねぇ、、アレクセイ、、私もアレクスって読んで良い?、、ユーリも、ユーニャって呼んでいい?、、ダメかな?、、なんか、、友達かな、、なぁんて、、だめかな?、、はは、、いやダメならダメでねぇ、、別に」

に心細くなったのか、セロニカは早口で言い訳を並べた。

昨日よりも、もっと深い「絆」を、彼女は求めていた。

ユーリ

「僕は良いよ、、、セロニカはなんて言って欲しい?」

セロニカ

「セっちゃんかな!アレクセイはダメ?」

二人の視線が、虚空を見つめるアレクセイに集まる。

アレクセイ

「ぇ、、ぁ、、、うん、、、、わかった、、っ、、セロニカ、、、」

セロニカ

「アレクス、、貴方はそういう所がモテないな、、絶対」

セロニカの毒づいたような一言に、ようやくアレクセイの瞳に微かな光が戻った。

ユーリ

「セッちゃん、、、、はは、、そういじめないでよアレクスを」

セロニカ

「うん、、ユーニャ、、、さぁ、、ここからどうなるんだろうね、、、」

運命は残酷だが…………この三人でなら

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