68話:宇宙は寒いみたい

ヴェルクの排気口から立ち昇る煙が、煤けた白から澄んだ青へと色を変えていく。

漆黒の装甲の継ぎ目に走る赤いラインもまた、内側から溢れ出すエネルギーに焼かれるように、鮮烈な青へと染まってゆく。

セナ

「うっそでしょ!?この機体」

セナが戦慄に声を震わせた。

彼女が指差す先、メインモニターの端には無機質なフォントで

〈warm-up complete〉

文字が静かに点滅していた。

アレクセイ

「何が?」

アレクセイは加速の反動に耐えながら、短く問い返す。

セナ

「アレだけの動きをしてやっと暖気が完了したって言いたい訳!?」

アレクセイ

「何が?」

セナ

「いや、、いやいやいや、、、今さっきマッハ超えて、、はぁ!???」

セナの理解はとうに限界を超えていた。アレクセイは困惑する彼女を余所に、視線を前方の巨大な異形へと戻す。

アレクセイ

「あの機械止めに、、、」

セナ

「何この機械、、馬鹿なの!?、、、核融合でもエネルギー足りないでしょこれ!?」

アレクセイ

「あの、、」

セナ

「訳わかんない!どういう事!ここは!?はぁ!?禁止技術なのこれ!?」

アレクセイ

「セナ、、、あの、、、、、いまはそれどころじゃ、、」

セナ

「ここが!こうなって、、、こうなってて、、ここの配線繋がってて、、、えぇ、、、はぁ?、、、は!?」

アレクセイ

「、、、、、、、、、セナ、、あの、、、えぇと、、、」

セナは狂ったようにモニターのウィンドウを次々と開き、システムの深層、その心臓部の設計図を暴こうと指を走らせる。

セナ

「、、、、、、!?、、、、アレクセイ!、、これ、、戦い続けると不味い!」

アレクセイ

「、、、、、、なんで?」

眼前の巨大な脅威よりも、すぐ目の前で髪を振り乱しながら叫ぶセナの熱量に、アレクセイは完全に気圧されていた。

セナ

「この機体のエンジン、、というか加速機構のスラスター!!これ周囲の空気から合成してエネルギーを作り出すタイプだったの」

アレクセイ

「、、、?、、、つまり戦い続けるともしかして、、エアドーム内の酸素、、大変?」

アレクセイの素朴な疑問に、セナは顔を真っ赤にして首を振った。

セナ

「大変どころじゃ無いわよ!!とりあえず、、、えぇと、、10分は安全!だから10分以内に!」

アレクセイ

「、、、、え、、、、なんか武装とかある?」

セナ

「ない!なんなのこの機体バルカンしか武装ないって、、アホなの!?誰よ開発者あああ!!!」

阿鼻叫喚のコクピット内。

セナの絶叫を背景に、アレクセイは操縦桿を静かに、しかし力強く握り直した。

アレクセイ

「、、、、、、、、とりあえず10分以内にケリをつければ良いんだろ、、、」

ガゥウウン!

咆哮のようなエンジン音が機体を震わせる。

漆黒の機体から立ち昇る青い蒸気は、もはや炎のように激しく揺らめき、宇宙の夜空が映る街を青白く照らし出した。

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