69話:女神の槍

ヴェルクは、路傍の瓦礫から引き抜いた太い鉄の棒を、無造作に、だが確実な殺意を込めて握り直した。

アレクセイ

「、、、、、、なんか弱点とかのあるの?」

セナ

「、、、、、配線系?、、、あと重心がおかしいとか?」

セナが震える指で解析データを指し示す。

アレクセイはその曖昧な回答を脳内で精査し、視線を前方の巨悪へと固定した。

アレクセイ

「、、、、ふぅん、、、」

メインモニターの数値は時速800kmを示している。周囲の景色が線となって背後に飛び去る中、アレクセイは操縦桿を鋭く弾いた。

ゴゥン!!

超加速の慣性を乗せて放たれた鉄の棒は、文字通り弾丸と化した。

空気を切り裂き、ハジコの操る巨大なリグマシーナギアの右腕へと突き刺さる。

鋼鉄が拉げ、配線が火花を散らして千切れ飛んだ。

アレクセイ

「ふむ、、やれそう、、でも、、弾がないなぁ」

セナ

「ち、、、力技が過ぎる、、、」

セナは呆然とモニターを見つめる。

精密機械の極致であるはずのリグマシーナギアを、ただの投石の延長で圧倒するアレクセイの戦闘センスは、彼女の常識を遥かに逸脱していた。

アレクセイ

「ふむ、、、どうしたもんか、、、、まぁ、、いいや投げよ」

アレクセイはヴェルクの出力を絞らず、路上の残骸。

先ほど自らが破壊したドローンリグマシーナギアの残骸へと急降下した。

それを力任せに拾い上げると、加速の勢いを殺さずに巨大な本体へと叩きつける。

1回、2回、3回、4回と。

巨大なリグマシーナギアは、時速800kmで飛来する数トンの鉄塊をまともに受け、装甲が醜く歪み、不恰好なその姿をさらに無惨に凹ませていく。

アレクセイ

「いけそうだな、、、」

アレクセイはまるで作業をこなすかのように、視界に入るドローンの残骸をすべて拾い、次々と巨大機へと投げつけた。

凄まじい衝撃音が街に木霊し、巨大機がたじろぐ。

セナ

「うーむ、、、外皮の部分だけ受けてるだけで内部にはまだ致命傷が行ってないわね、、」

アレクセイ

「む、、、だけど投げるもんなくなったぞ?」

周囲に転がっていた残骸は尽きた。アレクセイは空になったヴェルクの両手を見つめ、淡々と言った。

セナ

「ふぅむ、死なば諸共で特攻?」

アレクセイ

「じゃあするか」

セナ

「私と死ぬかもしれないのよ、、良いの私で」

セナが、膝の間からアレクセイを仰ぎ見る。

その問いに、アレクセイは一瞬の沈黙の後、視線を逸らさずに答えた。

アレクセイ

「、、、、、知らない、、でも母さんに紹介出来る人ではあるからね、(友人として)」

セナ

「へ、、、、、、、、、、ん?、、、ん、、、、、

っ!?、、、はれあれはれあれはれ、、」

セナの思考が停止し、奇妙な声を漏らす。

その動揺を置き去りにして、ヴェルクは再び地面に突き刺さっていた最後の鉄の棒を掴み、大気を燃やすような加速を開始した。

アレクセイ

「マッハ1までなら大丈夫、、、」

ヴェルクの装甲が激しい摩擦で青白く発光する。

音の壁を突き破る衝撃波を引き連れ、漆黒の機体は巨大なリグマシーナギアの中心核へと狙いを定めた。

セナ

「これ、、、え、、ぷ、、、ひゃ、、、え!!?」

アレクセイ

「落ちろ!!!!」

叫びと共に、全質量を込めた突撃が敢行された。

マッハの速度で突き出された鉄の棒が、巨大リグマシーナギアの最深部までを貫き通す。

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!

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