電子音が、密閉された機内に無機質に響く。
ピー…………ピピ………デェンテデンレンテー………!
『おめでとう!君の勝利だ!』
画面の中では派手なエフェクトが舞っているが、それを見つめる少年の瞳には、達成感の欠片も宿っていない。
「、、、、、、、、、、飽きたなぁ、、」
黒い髪色をした少年は、深く座席に背を預けたまま、独り言のように呟いた。
「このゲーム過疎ってきたなぁ、、、、別のゲーム行こ、、」
慣れた手つきで携帯用ゲーム機『アリウス』の画面をスライドさせ、データの海から次の暇潰しを探し出す。
周囲の乗客が旅の終わりに浮き足立つ中で、彼だけが切り離された停滞の中にいた。
「やっぱ選択系のゲームだよな、、、、コマンド式の方が自由だな、、反応が遅いんだよなぁ、、」
指先の動きにシステムが追いついていない。
その微かな苛立ちを拾うように、すぐ隣から高い声が響いた。
「なぁ、アレクス、良い加減ゲーム辞めたらどうなの?あと1時間で学園につくんだよ、せっかく景色が良いのにさ!」
隣人の声、その眼差しには隣に座る少年への隠しきれない世話焼きな性質が滲んでいる。
アレクス
「うるさいユーニャ、、そもそも最新の飛行機がある癖にわざわざ旧式で運行してるこの飛行機に問題があるんだろ?13時間だぞ!13時間!暇なんだこっちは!」
アレクスは顔を上げず、吐き捨てるように言った。
ユーニャ
「!、、アレクセイ、、静かにしてよ、、みんながこっち見るじゃないか!」
慌てて周囲を伺うユーニャの焦燥を、アレクセイは鼻で笑う。
アレクセイ
「、、、、、、、、、知らないよ、、、」
冷淡な一言と共に、彼はふたたびゲーム機の中へ引きこもった。
『まもなく着陸体制に入ります。シートベルトを締め、座席の背もたれ・テーブルを元の位置にお戻しください。』
機内アナウンスが流れ、いよいよ逃げ場のない現実が近づいてくる。
アレクセイ
「、、、、、、、はぁ、、、、なんで学園になんていかなきゃいけないんだ」
ユーニャ
「成績一位の君が行かなかったらどうするんだよ、中学の先生も困っちゃうって」
自分は凡庸な努力の積み重ねで隣への切符を掴んだというのに、隣の少年はゲームに興じながら、その椅子を軽々と奪い去っている。
ユーニャの言葉には、感嘆と、それ以上の昏い執着が混ざっていた。
だが、アレクセイはそんなユーニャの内心など興味がないと言わんばかりに、アリウスをポケットにねじ込んだ。
アレクセイ
「、、、、、、、、、、、、寝る、、、、着いたら起こして」
ユーニャ
「、、、、わかったよ、、」
しぶしぶながらも、ユーニャの声には安堵の色が混じる。
眠っている間だけは、この天才が自分の中で、無垢な子供のように自分を頼っているからだ。
重苦しいエンジンの振動を子守唄に、アレクセイは深い眠りへと落ちていく。
