オンバス
「おぉ!!こんな所に居たのか!!」
壁の残骸から土煙と共に現れたオンバスが、場違いなほど明るい声を上げた。
崩落した執務室の惨状を意に介さず、彼は呆然と立ち尽くす三人を指さす。
アレクセイ
「、、、、、っ、、、、」
アレクセイは反射的に身構えるが、オンバスの視線に敵意がないことを悟り、僅かに肩の力を抜いた。
オンバス
「なぁ気にすんな気にすんな!後ろから追ってこなくなったから心配してたんだぜ?」
ユーリ
「バレてる、、、、」
ユーリが機材を抱え直し、観念したように肩を落とす。最初から彼らの稚拙な尾行など、筒抜けだったのだ。
キャサリー
「えと、、、それで、、、」
キャサリーが恐る恐る、手に持った外部メモリを掲げて見せる。
オンバスはその小さなチップを一瞥すると、満足げに鼻を鳴らした。
オンバス
「、、、、、ふぅむ、、なるほど、、、こっちにこい、、、目的は達成出来てるみたいだからな、、ついてこい!!」
有無を言わせぬ号令。オンバスは再び、自分が突き破ってきた壁の穴へと引き返していく。
アレクセイ
「ユーリ、、、どうする」
ユーリ
「、、、、、、、、、ぇ、、、あ、、、ついて行くしかないでしょ、、、壁破るってなんだよ、、アレクセイ出来る?」
ユーリの問いに、アレクセイは破壊された壁の断面に歩み寄り、指先でその厚みを確かめるように叩いた。
コンコンッ
アレクセイ
「、、、、、、、、、、、、、、、無理かも、、、、」
キャサリ―
「うそ、、、アレクセイでも無理なの?」
アレクセイ
「え、、、人をなんだと思ってんの」
心底意外そうな言葉に、アレクセイは呆れたような溜息を吐き出した。
ユーリ
「まぁ、、良いや、、、行こ」
ユーリがオンバスの後に続こうと駆け出す。
アレクセイはその横で、足元に蹲っていたセナを、一切の迷いなくお姫様抱っこで抱え上げた。
セナ
「ゎ!?ちょ、、、何すんのよ!」
キャサリー
「分かるわ、、アレクセイ」
アレクセイ
「でしょ?」
セナ
「何がよ!!」
アレクセイ、キャサリー
「足、、おっそいなぁ、、、って」
二人の声が完璧に重なった。
セナ
「はぁ!!??ならせめてキャサリーじゃないの!?」
キャサリー
「嫌よ、、乙女の筋肉舐めないで!箸より重いもの持った事ないのよ!あと、重量を上げちゃうと腕が太くなっちゃうのよ、低重量で回数稼ぐのが美ボディには、、、、、、有効よ!」
キャサリーは自らの腕を誇示するようにポーズを決め、アレクセイの足取りに合わせて軽快に走り出す。
セナ
「な!?ありえない!!ちょ、、辞めてよ!」
アレクセイ
「え、、じゃあ辞める」
アレクセイは足を止めず、腕の力を抜く素振りを見せた。
セナ
「辞めるな!ちょ、、、辞めるな!!そこ!!」
アレクセイ
「どっちだよ」
オンバス
「早くしろ!あと8分以内に船に戻らなきゃいけないんだ!!」
前方から、オンバスの地鳴りのような怒声が響く。タイムリミットは目前だった。
セナ
「チッ、、、くそ!」
セナは逃れられない運命を悟り、屈辱に顔を真っ赤に染めながらアレクセイの胸元に顔を伏せた。
アレクセイとキャサリーは、物理的な熱を帯び始めた屋敷の廊下を、オンバスの背中を追って一気に駆け抜けていった。
