57話:横暴

ダンッ!

執務室の重厚な扉が、蹴破られるようにして左右に跳ねた。

室内で苛立ちを爆発させていたハジコが、弾かれたように振り返り、侵入者たちを凝視する。

ハジコ

「何故この部屋に居る!」

ハジコの私兵

「な、、子供!?、、、、あの白髪の男の仲間か!?」

先行したオンバスの制圧劇を想起したのか、私兵が反射的に銃口を向ける。

その銃口の先に立つアレクセイは、感情の消えた瞳で室内を見渡した。

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、む、、、、、」

ユーリ

「えと、、僕たちはその、、、、迷いこんじゃって、、」

ユーリが機材を抱え直し、場違いなほどに素っ頓狂な弁明を口にする。

だが、ハジコの視線は彼らを通り越し、後ろに隠れていた少女へと注がれた。

ハジコ

「む、、、、ん?、、キャサリーではないか、、私の元に来てくれたのか」

ねっとりとした、欲望を隠そうともしない視線。

キャサリーは全身に鳥肌が立つのを感じ、アレクセイの影に深く身を潜めた。

キャサリー

「、、、、き、、、、きもい、、、」

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、、、、?、、、、、」

アレクセイが不審げに首を傾げる。その横から、これまで沈黙を守っていたセナが、一歩前へと踏み出した。

セナ

「ハジコ、、、、、、」

ハジコ

「あぁ、、そこに居るのはアザミか、、良いじゃないか、、今すぐそのガキが持ってるメモリをもってこい」

ハジコはセナを人間ではなく、ただの便利な道具として扱うように顎で指図する。

アレクセイ

「む、、、、、」

セナ

「私はもう貴方に媚びへつらわない、、、行かないわ」

セナの喉から絞り出された拒絶。ハジコはそれを聞き、心底愉快そうに唇を歪めた

ハジコ

「はぁ?、、、、、クラム家もない、お前の父親もいない、祖父も、誰もな、、誰が拾ってやった?」

セナ

「死ねばいい、、アンタが居なきゃ私の家は、、ケーニッヒの誇りはそのままだった!!」

ハジコ

「ははっ、、人の上で散々楽しんだろう?、、売られたくないと誰よりも命を惜しんだ女が、、何を言う」

アレクセイ

「、、、、、、、!、、、、、、、」

ハジコが語るセナの「生き汚さ」の背景。アレクセイの眉間が、険しく寄る。

セナ

「誰が好き好んでアンタの」

ハジコ

「黙れ娼婦が!!男のものしか舐められない女が!!良いから早く奪いに行け!!そして私の元へ持ってこい!!」

罵倒。

人の尊厳を紙屑のように扱うその言葉が放たれた瞬間、室内の空気が一変した。

ユーリ

「ぇ、、、ぁ、、、、、」

ユーリは、無意識に掴んでいたセナの細い腕を、熱い鉄に触れたかのようにパッと離した。

セナはその、自分から離れていったユーリの温かな手を、ただ黙って見つめている。

ハジコの私兵が、主人の命令に従いセナの髪を掴もうと手を伸ばした瞬間。

ガン!!!!!

衝撃音。

それは人体を殴った柔らかな音ではない。

重い質量が壁に叩きつけられ、建築構造そのものが悲鳴を上げた音だ。

気づけば、私兵の一人が壁にめり込み、白目を剥いて崩れ落ちていた。

その中央に、アレクセイが立っていた。

彼の全身からは、駆動音にも似た、静かな、しかし暴力的な殺気が溢れ出している。

アレクセイ

「人を蔑んだな、見下したな、軽んじたな、、、暴力を振るわれないとはばかるお前が1番ムカつく!!!弱者をいじめちゃいけないと母親に教わらなかったか!!」

アレクセイの咆哮が、豪華な客間を震わせる。

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