38話:どこまで行ったら宇宙飛行士と言える?

月の隠し港にあるマチルの宇宙船。

その閉ざされた船内には、脱出の興奮も冷めやらぬまま、どこかちぐはぐで、妙に生活感のある空気が漂っていた。

マチルは椅子の背もたれに深く体重を預け、やれやれといった様子で少年たちを振り返る。

マチル

「はぁ、、ったくどうしたもんかねぇ、、、で?そこの嬢ちゃんの名前は?」

唐突な問いに、助け出された少女は少し気まずそうに視線を泳がせた。

「私?、、、、あぁ、、、、、、、、えぇとあの、、」

マチル

「うん?言えないのかい?」

「いえあのそうではなく、、、、、私の名前は、、、、、キャサリー・ライド、、、あ!えぇとライドって言っても本家じゃなくて分家も分家で」

マチル

「キャサリーか、珍しい名だな」

キャサリ―

「、、、、、ぅ。やっぱ、、、、、名前、、変かな?、、、、、」

その呟きに、アレクセイが空を見つめたまま口を開く。

アレクセイ

「、、、、、、、、いやそれ言ったら俺アレクセイなんだけど、、、、、、、、キャサリーとか似た様なもんじゃない?」

ユーリ

「、、、、、、、ぼ、、僕も古いよ?、、、ユーリだよ?、、、え?、、、なにこの空気」

三人の間に流れる奇妙な沈黙。

その名はあまりに時代錯誤で、歴史の教科書から抜け出してきたかのよう。

マチル

「、、、、、、、、、、、、、学生の時に居た名前多いなぁ、、、、、、、」

キャサリー

「え!そうなの!?、、、私以外にそういうの初めてみた!なんかさなんかさみんなアルファロンとかさぁガンマリンとかさなんか私だけ古る古るネームでさぁーあ」

キャサリーは、これまでの緊張が嘘のように身を乗り出した。

同じ古臭い名を持つ者を見つけた喜びが、彼女を多弁にさせる。

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、え、、、あぁ、、そうなんだ、、故郷だと同じ様な名前しかないからわかんないや、、、、、」

ユーリ

「ネットだと割とバカにされるけどね」

キャサリー

「やっぱそうだよね!なんかさ名前だけで地球では差別ないんでしょ!」

キャサリーの無邪気な問い。二人は一瞬視線を交わし、それからアレクセイが静かに事実を告げる。

アレクセイ

「ん?、、、16歳から18歳の子供は全員アカデムグロードに集められるはずだけど、、、、、、おかしくない?、、、15歳には見えないけど、、、、」

キャサリー

「あー、、、、ここさー子供送る数を少なくして支援金を領主がとってんだよね」

ユーリ

「帝国法違反じゃないか、、、ぅ、、はぁ、、、でも来なくて良かったのかも、、」

ユーリの脳裏には、炎に包まれた学園と、灰となった恋人の記憶がよぎっていた。

キャサリー

「え?何が?」

マチル

「情報統制もされてんだ、、、アカデムグロードはつい数日前に滅んだよ、、死者・行方不明者数数数千名、怪我人など影響含め数十万人がね」

キャサリー

「え!!??そうなの!!????」

あまりに巨大な惨劇の報。キャサリーが絶句する中、アレクセイは淡々と対話を戻した。

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、、そうだよ、、、、君はついて来てなんなのさ」

キャサリー

「いや、ついて来なきゃ連れてかれちゃうでしょ」

アレクセイ

「なんで行きたくないの?」

キャサリー

「領主はおっさんでロリコン、アンダースタン?」

アレクセイ

「?、、、、、、、、ロリータと言うには老け過ぎてる様な、、、」

キャサリー

「テメェ!」

キャサリーの手が、アレクセイの襟首を掴み、猛烈な勢いで前後に揺らし始めた。

アレクセイ

「ぐぇ、、、辞めてよ」

キャサリー

「これでも私18歳!!ピッチピチよ!!」

アレクセイ

「え?なに、、、ビッチビチ?、、、あんまりそういう事を女性が言うのは、、、」

キャサリー

「お前は耳が腐ってんのか!」

アレクセイ

「ぐぅぅうええええ」

三半規管をかき回され、アレクセイの顔色が一気に土気色へと変わる。

その光景を、マチルは呆れたように眺めていた。

マチル

「なぁ、、、アレクセイも、、ユーリ、、お前も人となりを掴めないんだが、、、なに?若者はこういうノリなのか?」

ユーリ

「、、、、、、あぁ、、、アレクセイはデリカシーがないので、、、天才だから」

マチル

「、、、、、ふぅ〜ん、、、、どうさな、、ユーリ、、アンタよりはマシだろうなデリカシーとしては」

ユーリ

「む、、なんなんですか?何か言いたい事でも?」

マチル

「さぁ?、、で、、どうすんの?、、港閉じられちゃったから脱出も出来ないぞ、エアドーム壊せば脱出は出来るがここで暮らす数十万人が死ぬな」

現実的な壁。帝国の厳格な封鎖。逃げ場のないドームの中で、マチルが問いかける。

キャサリー

「じゃあ簡単よ!領主をぶっ飛ばせば良いのよ!」

アレクセイ

「、、、、、、、なんで君が仕切ってんの、、、名前じゃなくてそういう図々しいとこで遠巻きにされてたんじゃない?」

キャサリー

「アンタはそういうズケズケものを言うといくら顔が良いからってモテないわよ!!あと遠巻きにされてないから!」

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