35話:裏側にあるものを見たとてそれも結局表

漆黒の静寂を切り裂き、アレクセイの乗る宇宙船が月の港に入る。

 無機質なクレーターの合間にそびえ立つ月都市13号「アポロ」。

その巨大なドームが、サーチライトを反射して鈍く光る。

管制室と光通信がされる。

正規の回線とは別に、秘匿された暗号化通信が一瞬だけ交差した。

デニスは個包を投げ渡し、多数の船とは違うルートを辿っていく。

ユーリ

「む、、、今のって」

マチル

「賄賂さ、、文句あるか?」

ユーリ

「な、、、、、、、、、」

法と秩序を信じてきた学生にとって、大人の社会の裏側はあまりに不潔で、あまりに合理的だった。

デニス

「じゃあちょっくら情報貰ってきます」

マチル

「ラジェシュ!! いつまで暇食ってんだ! 仕事しろ!!」

ラジェシュ

「わかってますよ、、はいはい、、どうせ飯でしょ飯、、、はぁぁ、、、はいはい」

バンダナをつけたやる気のなさそうな男、ラジェシュが数人を連れて降りていく。

マチル

「アレクセイ、ユーリ、、いくよ」

アレクセイ

「どこにですか?」

マチル

「身分偽装屋さ」

アレクセイ

「犯罪では?」

マチル

「じゃあそのままほっつき歩いて捕まるか?」

アレクセイ

「いえ、、、、、、、それは、、、」

ユーリ

「でもどうやって、、、身分認証システムをいじるなんて不可能なんじゃないですか?」

帝国の認証網は、本来なら個人を完全に縛り付けるものなのだから。

マチル

「さぁ? 現皇帝ニコライは各都市の認証システムすら自治権として明け渡したからな、、月都市はそれぞれのエアドームで国みたいになっている、、、で、、ここに奴らはどうしたと思う?」

ユーリ

「、、、、、、でもそれは、、帝国法への抵触じゃ」

マチル

「先の皇帝アレクサンドルが帝国法自体歪めたんだ、、仕方ないな」

平和のための法が、脱法のための穴に変わっている。

アレクセイ

「でもそれじゃあいちいちコロニーに行ったら改変しなきゃならないですか?、、お金とかどうするんです?」

マチル

「いいよ、、どうせ、、アレクサンドルが寿命でポックリ逝ったせいでやる気のない奴らが私たち元レジスタンスなのさ、、金くらいどうにでもなる」

アレクセイ

「でも俺たちが、犯人、、かも、、、」

まだアレクセイの心には、自分の機体が撒き散らした破壊の残像がこびりついている。

マチル

「どうさな、、、まぁ良いのさ、、深く考えんなよ」

アレクセイ

「、、、、はい、、、、」

ユーリ

「む、、、アレクス、、、、、なんなの、、そうやって、、、もう、、、」

 二人の戸惑いを乗せたまま、宇宙船は月の深い暗闇へと沈み込んでいった。

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