カチッ
ライターの火が暗がりに燻る。
「っ、、、、、、すぅ、、、、、、はぁぁぁぁ、、、、、、」
煙と共に、黒い長髪を靡かせた長身の女性が重い溜息を吐き出した。
その視線の先には縛りつける必要すらなく、ただ項垂れている二人の少年がいる。
一人は、魂が抜けた様に放心する黒髪の少年。
一人は、亡骸となった少女を抱きしめ続ける銀髪の少年。
「、、、、、、、、、、、はぁぁぁぁ、、、」
二度目の溜息を吐くと、部下を手招きで呼んだ。
「おい」
「はい、隊長」
「、、、、、、あの機体から出てきたのがこれで、、、街がこのありさま、、いったいどうしろって話だ」
あたりを多数の軍用ヘリがサーチライトで照らし、崩壊した街の惨状を暴き出している。
瓦礫の山と、鉄の死骸。
「、、、、、、、いえ、、、ですが、、、、カナリア隊長、、、」
カナリア
「はぁ、、、、少年二人が? この街をめちゃくちゃにしました? 、、、、報告書に書ける訳がないし、、ここに居た憲兵隊は私らよりも強い奴らだぞ、、、、、、、少なくとも十機は常に稼働する、、おい! レシーヌ!!!!」
レシーヌ
「ひゃ、、はい!! たいちょう!!」
アレクセイたちが乗っていた機体を調べていた小柄な少女、レシーヌが、弾かれたように駆け寄ってきた。
カナリア
「で? 、、どうなんだ? 、、コイツらに出来そうなのか?」
レシーヌ
「え、、えぇと、、この機体、、、禁止された技術ばっかで、、そのちょっと本部に持ち帰らないと、、それは、、、」
カナリア
「はぁぁぁ、、、帝国法に基づいて、一定以上の犯罪者にはその場での射殺が認められている、、、、で、、、、お前らに意見を聞く、、殺すべきか? 殺さないべきか? コイツらは、、、、はぁ、、、、、犯人は明らかにコイツらしか居ないんだがな、、、、」
カナリアの問いに、周囲の兵士たちがざわめく。
「聖別の火に関係あるんですか? 放送がありましたが、、この子達は、、さすがに、、」
「俺の友人もこの街に居たんです、、殺すべきですよ、、子供って話じゃありません」
「どうせ裁判にかけられて死刑でしょうから、、良いのでは?」
「え、、でも、まだ子供ですし、もしかしたらこの子達が英雄的にどーん! ってやったのかも、、」
カナリアは、押収された、まだ綺麗なままの二人の学生証を見つめ、低く呟いた。
カナリア
「、、、、意見割れすぎだろ、、、、どうするもんかなぁ、、コイツらは喋らないしよぉ、、」
レシーヌ
「あ、、あの、、そこの、ユーリ、、くん? 、、、あの、、その子の、、もう、、すでに、、あの」
ユーリはレシーヌの声に反応すら示さない。
枯れたはずの涙を、血の通わない頬にポロポロとこぼし、ただ冷たいセロニカを抱きしめ続けている。
カナリア
「、、、、、、チッ、、、はぁ、、、帝国法に基づき十九時二十七分、、アレクセイ・ミラー、ユーリ・カザニヤフの処刑を断行する」
冷徹な宣言と共に、カナリアが銃口を向ける。
だが、銃鉄の音が響いても、死を目前にしたアレクセイもユーリも、指先一つ動かそうとはしなかった。
キッィイイイイイイイイイイイン!!!!!!
突如、大気を制圧するような高音が響き渡り、夜空を裂いて巨大な船が現れた。
眩い光が崩落した街を白く染める。
カナリア
「今度はなんだ! 親玉か!」
マチル
「よぉ、、カナリア! 、、久しぶりだなぁ、、、」
船体から響いた聞き覚えのある声に、カナリアの顔が険しく歪む。
カナリア
「な!? 、、、マチル! 手を洗うという約束だっただろ!!」
マチル
「、、はは、、まぁ、、そこの少年達と機体に用があるのさ」
カナリア
「ふざけるじゃないよ、、、そのガキ達は私が捕獲している」
マチル
「情報交換と行こうじゃないか、いつもの様に、、さ」
カナリア
「、、、、、、、情報交換だと?」
マチルが船体からカナリアの眼前に飛び降りた。
周囲の兵士たちが一斉に銃口を向けるが、彼女は不敵な笑みを崩さない。
マチル
「この街の主犯は聖別の火というレジスタンスのタカ派、、、、それも一番タチの悪いリベラリストさ」
マチルが指先で弾いた一枚のチップが、カナリアの手元へ。
カナリア
「、、、、、、、、カニアスが泣くよマチル・リリー」
マチル
「所詮死んだ男さ」
カナリア
「ならアンタは腐った女だな、、、」
マチル
「で? 、、、どうする? 、、、子供は殺さないんだろ、、、カナリア・エロクサム?」
カナリア
「黙ってろ、、、、、、、っ、あぁ、、、もう、、好きにしろ!」
カナリアが背を向ける。
それを合図に、マチルの部下たちが迅速にアレクセイ、ユーリ、そして赤熱の冷めやらぬ機体を引き上げ始めた。
マチル
「カナリア、、、、正義は好きか?」
カナリア
「、、、、、、、、、、、責務さ、、ただの、、その子達をどうするつもりだ」
マチル
「さぁ? 、、、、、、、じゃあな」
ウゥン、という低周波。
重力に逆らう様に、軽々とその巨大な船体は浮き上がり、闇の彼方、宇宙へ向かって吸い込まれていった。
