キャサリー
「好きだった」
去りゆく風のように、キャサリーは小さく、けれど確かな言葉を月夜に放った。
アレクセイはその響きを正面から受け止め、隠し立てのない瞳で彼女を見返した。
アレクセイ
「そう、、、俺はあんま、、ユーリや母さん、、、セロニカより好きでは無いよ、、でも友人だと思う」
キャサリー
「生意気な男め」
あまりに正直な、彼らしい優先順位。キャサリーは苦笑混じりに毒づいたが、その表情には憑き物が落ちたような清々しさが宿っていた。
アレクセイ
「、、、、、、、、、む、、でも今日だけ2回もキスしちゃった、、、」
キャサリー
「、、、、、、、なに!?、、私が初じゃないの!?」
アレクセイ
「セナがさっきコックピットの中でキスしてきたんだよ」
キャサリー
「なに!?、、やはり乙女のセンサーが正しかった、、、、、、くそぉ」
アレクセイ
「でね、ヴェルクのコックピット内で液体呼吸用の液体が出てきてね、戦闘中にいきなり飲めとかなんとかね、こっちは戦闘してんのに」
キャサリー
「、、、、、なんで!、、、くそ!私も乗り込めば良かった!」
最悪の状況下で繰り広げられたもう一つの密室劇を知り、キャサリーは地団駄を踏んだ。アレクセイは困ったように眉を下げる。
アレクセイ
「いや、、キャサリーまで入ったら流石に狭いよ、、、、」
キャサリー
「あああああもう、、アレクセイ!、、次会ったら惚れてね」
キャサリーはアレクセイの胸元を指差し、宣言するように言い放った。
アレクセイ
「それは分かんない!」
キャサリー
「なんでそこ笑顔なの!?」
アレクセイ
「だってキャサリーのが凄くなりそうだもん、月都市の領主だろ?」
キャサリー
「決まった訳じゃないわ、それに月都市で女性首長は今まで居ないし、、、、、怖いわよ!」
新たな重圧に肩をすくめるキャサリーに、アレクセイは彼なりの励ましを贈った。
アレクセイ
「良いんじゃ無いの?前例がある方が怖いじゃん」
キャサリー
「なんで?」
アレクセイ
「だって比べられるだろ?ずっと、それを乗り越えても乗り越えてもまた壁が現れる」
キャサリー
「アレクセイの話?」
アレクセイ
「さぁ?、、、俺はみんなと一緒にゲームをしたいだけって感じ、、、求められるから応えられるんじゃない?」
キャサリー
「ふぅん、、、、、、アレクセイってもしかして天才?」
アレクセイ
「どうかな、、、、母さんが言うには割と出来るタイプの子らしい」
キャサリー
「じゃあ私と一緒ね、、今度また会おうね」
キャサリーは少しだけ寂しそうに、けれど誇り高く微笑んだ。
アレクセイ
「、、、、会ったら何して遊ぶ?」
キャサリー
「私が作った月都市で女装コンテスト、、とか?ユーリとか似合いそうじゃない?」
アレクセイ
「ふふっ、、っっはっはっっははっはは、、、似合う似合う、、絶対似合う、、、うん、、また会おう!キャサリー!」
張り詰めていた感情が、ユーリをダシにした冗談で見事に解けていく。
アレクセイは少年らしい屈託のない笑みを浮かべ、夜の空気を震わせた。
キャサリー
「うん、、、アレクセイ、、、また会おうね」
キャサリーもまた、柔らかい笑みを返し、その場に立ち尽くす。
アレクセイとキャサリーは、どちらからともなく拳を軽く突き出した。
コン、と乾いた音が響き、それが二人の結んだ新たな約束の証となる。
二人は互いの進むべき道へと、一度も振り返ることなく手を振り、銀世界の静寂の中へと別れていった。
