船内にて。
張り詰めていた空気がようやく緩み、コクピットから降りたアレクセイの姿を見つけるなり、ユーリが駆け寄った。
ユーリ
「、、、、、アレクセイ、、、、」
アレクセイ
「、、、、、、ぶい、、、、」
アレクセイは、指先で、力なくも確かなピースサインをユーリに向ける。
その無機質な仕草に、ユーリの瞳から堰を切ったように安堵が溢れ出した。
ユーリ
「生きてて良かった、、、、本当に、、、、、」
アレクセイ
「、、、、、、、、、、ユーリ、、、、」
言葉は要らなかった。二人は互いの無事を確かめ合うように、強く抱きしめ合う。そ
の傍らで、アレクセイと共に死線を潜り抜けたセナが、どこか誇らしげに鼻を鳴らした。
セナ
「(ふふん、、、)」
その様子を離れた場所から見ていたキャサリーの眉が、不自然にピクリと跳ねる。
キャサリー
「(む?、、、、むむ、、、、、これは、、、待てよ、、、なんかセナとアレクセイの距離近いなぁ、、、いや近くない?、、、やっぱ近いわ!!)」
女の直感が警鐘を鳴らすが、再会の余韻に浸る時間は、非情な女船長によって打ち切られた。
マチル
「アレクセイ、ユーリ、、、そしてまぁそこの新しい子は後にして、、こっから逃走をする、、キャサリー、、君はここで降りていけ」
キャサリー
「え!?」
耳を疑うような言葉に、キャサリーが素っ頓狂な声を上げる。
マチルは冷徹な眼差しを向けたまま、淡々と事実を突きつけた。
マチル
「アレクセイの機体ヴェルク、、これはすでに見られてカメラに映っているんだ、、その操縦者である、、アレクセイ含め3人はここには居られない、、だがキャサリー、、君は違う」
キャサリー
「、、、、、どうしろと?」
マチル
「ハジコの次は君がすれば良い」
あまりに突拍子もない提案。キャサリーは一瞬、自分が何を言われたのか理解できず、たじろいだ。
キャサリー
「、、、、、、、、私、、、無理よ!、、、私だって別に」
マチル
「この月都市では同じ苗字が多い、、何故か分かるか?」
マチルの問いに、ユーリが抱擁を解き、少し考えてから答えた。
ユーリ
「科学者達がそれぞれ建てた都市、、だから、、その、、移住者達は親族関係、、、だから? 」
パチン!
マチルが乾いた音を鳴らしてキャサリーを指差す。
マチル
「そうだ、そしてキャサリー、、君の先祖は分かるだろう?」
キャサリー
「、、、、、、、、先祖って言っても私は直系じゃないわ、、、何百年も前に分家した一族よ」
マチル
「ハジコだって元々それなんだ、、、良いじゃないか他人でも、、、どうせなら箔があればいい、、、カナリアは真面目で有能だからな、、お前のデータを貰えればお前を擁立するさ」
キャサリー
「、、、、、、、、む、、、、、」
マチル
「時間は無いぜ、アイツらが検閲と捜査を始める前にお前が行かなきゃここは帝国から自治権を剥奪されるだろうな、、ま、、ハジコよりマシになるがな」
逃げ道を塞ぐようなマチルの弁舌。キャサリーは追い詰められた獲物のように、必死に頭を回転させた。
キャサリー
「むむむ、、、、なんか気持ち悪い!そうやって時間が無い中選択を押し付けて!詐欺のやり口よ!」
ラジェシュ
「お、、勘が鋭いね、、、良い子だな」
デニス
「まぁマチルさんが追い詰め過ぎっすね今のは」
横から茶々を入れる男たちに、マチルが眉を吊り上げて怒鳴りつける。
マチル
「うっるさいなぁ黙ってろ!」
船内の騒がしさの裏側で、月都市の運命を左右する決断の刻限が刻一刻と迫っていた。
