59話:ハリケーンの気配?

オンバス

「おぉ!!こんな所に居たのか!!」

壁の残骸から土煙と共に現れたオンバスが、場違いなほど明るい声を上げた。

崩落した執務室の惨状を意に介さず、彼は呆然と立ち尽くす三人を指さす。

アレクセイ

「、、、、、っ、、、、」

アレクセイは反射的に身構えるが、オンバスの視線に敵意がないことを悟り、僅かに肩の力を抜いた。

オンバス

「なぁ気にすんな気にすんな!後ろから追ってこなくなったから心配してたんだぜ?」

ユーリ

「バレてる、、、、」

ユーリが機材を抱え直し、観念したように肩を落とす。最初から彼らの稚拙な尾行など、筒抜けだったのだ。

キャサリー

「えと、、、それで、、、」

キャサリーが恐る恐る、手に持った外部メモリを掲げて見せる。

オンバスはその小さなチップを一瞥すると、満足げに鼻を鳴らした。

オンバス

「、、、、、ふぅむ、、なるほど、、、こっちにこい、、、目的は達成出来てるみたいだからな、、ついてこい!!」

有無を言わせぬ号令。オンバスは再び、自分が突き破ってきた壁の穴へと引き返していく。

アレクセイ

「ユーリ、、、どうする」

ユーリ

「、、、、、、、、、ぇ、、、あ、、、ついて行くしかないでしょ、、、壁破るってなんだよ、、アレクセイ出来る?」

ユーリの問いに、アレクセイは破壊された壁の断面に歩み寄り、指先でその厚みを確かめるように叩いた。

コンコンッ

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、、、、、無理かも、、、、」

キャサリ―

「うそ、、、アレクセイでも無理なの?」

アレクセイ

「え、、、人をなんだと思ってんの」

心底意外そうな言葉に、アレクセイは呆れたような溜息を吐き出した。

ユーリ

「まぁ、、良いや、、、行こ」

ユーリがオンバスの後に続こうと駆け出す。

アレクセイはその横で、足元に蹲っていたセナを、一切の迷いなくお姫様抱っこで抱え上げた。

セナ

「ゎ!?ちょ、、、何すんのよ!」

キャサリー

「分かるわ、、アレクセイ」

アレクセイ

「でしょ?」

セナ

「何がよ!!」

アレクセイ、キャサリー

「足、、おっそいなぁ、、、って」

二人の声が完璧に重なった。

セナ

「はぁ!!??ならせめてキャサリーじゃないの!?」

キャサリー

「嫌よ、、乙女の筋肉舐めないで!箸より重いもの持った事ないのよ!あと、重量を上げちゃうと腕が太くなっちゃうのよ、低重量で回数稼ぐのが美ボディには、、、、、、有効よ!」

キャサリーは自らの腕を誇示するようにポーズを決め、アレクセイの足取りに合わせて軽快に走り出す。

セナ

「な!?ありえない!!ちょ、、辞めてよ!」

アレクセイ

「え、、じゃあ辞める」

アレクセイは足を止めず、腕の力を抜く素振りを見せた。

セナ

「辞めるな!ちょ、、、辞めるな!!そこ!!」

アレクセイ

「どっちだよ」

オンバス

「早くしろ!あと8分以内に船に戻らなきゃいけないんだ!!」

前方から、オンバスの地鳴りのような怒声が響く。タイムリミットは目前だった。

セナ

「チッ、、、くそ!」

セナは逃れられない運命を悟り、屈辱に顔を真っ赤に染めながらアレクセイの胸元に顔を伏せた。

アレクセイとキャサリーは、物理的な熱を帯び始めた屋敷の廊下を、オンバスの背中を追って一気に駆け抜けていった。

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