重厚な戦艦の装甲に囲まれた、手狭な休憩室に乾いた衝撃音が鳴り響いた。
ガアアン!!!!
拳を叩きつけられた金属壁が震え、室内の空気を震わせる。
カナリア
「糞が!!!」
カナリアは殴りつけた右手をそのままに、肩で荒い息をついた。
「隊長また癇癪ですか?」
壁際に背を預けていた男が、視線を動かさずに声をかける。
カナリア
「レジット黙ってろ!あのクソジジイども!!」
レジット
「、、、、、、、、、、、仕方なくないですか?今回の一件は過去100年、、、いえ500年の歴史を見ても史上類を見ない大規模テロなんですから」
カナリア
「うるさいな!!」
カナリアは椅子を蹴るようにして座り、深く背もたれに体を預けて目を閉じた。まぶたの裏に、会議室で浴びせられた老人たちの声が次々と蘇る。
―
「今回の一件はレジスタンスの」
「まだ火星の問題のが」
「未知の新兵器?馬鹿言ってんじゃないよ」
「レジスタンスに関わる?また起こったら、、」
「今回の一件はカナリア大佐の一存で、、」
「アカデムグロードの憲兵隊は何を」
「大規模討伐部隊をレジスタンスに派遣」
「南極に行ってレジスタンスと交渉を」
「皇帝陛下への報告は情報が集まったら、、」
「いくらエロクサム家のものとはいえカナリア大佐に全任するのは、、、」
―
カナリア
「そんな話なんざ通信で出来るだろ!!!なんで私らが直接会いに行かなきゃいけないんだよ!!!糞が!!!」
カナリアは再び立ち上がり、机の上の端末を乱暴に手繰り寄せた。
レシーヌ
「えぇと一応、発信器は外されて居ない様で、、あの機体を回収した船は月都市に居るようですけど、、、」
操作席のレシーヌが、震える指でホログラムの座標を指し示した。
カナリア
「古臭いんだよ!あのジジイどもは毎回毎回実況見分だと!?馬鹿か!!テロだぞテロ!犯人がどうかもわかってないのに、、、っああ!!!もう糞!!行くぞ!!」
カナリアは苛立ちを隠さず、乱暴な足取りで自動ドアへ向かう。
レジット
「、、、、、この人もう43歳なのに」
レジットが小さく息を漏らした瞬間、鋭い風を切る音が空気を裂いた。
シュンッ
レジットの頬を薄く切り裂き、一本のペーパーナイフが背後の壁に深く突き刺さる。
レジット
「、、、、、、、、、、、、、、すんません、、、、隊長、、、」
レジットは頬を伝う血を拭いもせず、直立不動で頭を下げた。
レシーヌ
(ひぇぇぇ、、、、私まだ軍学校出て半年なのになんでこんな大事件に遭遇しちゃうのぉぉぉぉ)
レシーヌはコンソールに顔を伏せるようにして、嵐が過ぎ去るのを待っていた。
