キャサリー
「あー、アレクセイ?」
背後からかけられた声に、アレクセイは飲み込もうとしていたサンドイッチを止めた。
アレクセイ
「何?」
キャサリー
「助けてください!お願いします!」
キャサリーは両手を胸の前で握りしめ、アレクセイの正面に回り込んで頭を下げた。
アレクセイ
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、え、、、、、」
咀嚼が止まったまま、アレクセイは困惑を隠さず目を瞬かせた。
キャサリー
「さっきはその、、ごめん!!自分の事ばかり考えてた!でも、、あぁ、えと、このでもが良くないんだけど、、あの、、私には」
必死に言葉を繋ごうとするキャサリーの横で、デニスがユーリの肩を引き寄せた。
デニス
「なぁ、ここ俺らマチル団の船なんだけど、どういう事?」
デニスが小声で耳打ちする。
ユーリ
「緩い雰囲気なのが良くないんじゃないですか?」
ユーリが視線を向けた先では、外部の人間が必死に交渉しているにも関わらず、乗組員たちがポーカーのカードを配り、ゲームの電子音に興じていた。
デニス
「、、、、、、、それがうちの船だ!」
デニスは胸を張り、周囲の騒がしい日常を見渡した。
ユーリ
「そーですか」
キャサリー
「あの、、アレクセイ!、、、、、助けてほしい!私には武力がないわ!影響力もない!あるのはこの洗練されたスタイルと美貌だけ」
キャサリーはアレクセイの瞳を真っ直ぐに見つめ、自分に残された唯一の武器を提示した。
アレクセイ
「、、、、、、、、、む、、、それ辞めろ」
アレクセイの表情が強張り、手に持っていたサンドイッチを皿に放った。
キャサリー
「、、、、へ?、、、」
アレクセイ
「自分で自分を美しいって言うな、、、、ムカつくから、、、」
アレクセイは眉間に深いしわを寄せ、視線を逸らして吐き捨てた。
キャサリー
「それは、、、ごめん、、、、、」
言葉を失ったキャサリーの瞳にみるみる涙が溜まっていく。
学校という守られた枠組みの外で、自分の拠り所としてきた自負を真っ向から否定された衝撃に、彼女の肩が細かく震えた。
キャサリー
「ぁ、、、ぇと、、、ぅ、、、、、それ、、それで、、、、あの、、、」
言葉にならない声を漏らし、キャサリーは顔を伏せた。
当然だ、いくら18と16とはいえ学校で縛られた上下関係ではないのだ。
自分のやる事なす事を否定されてしまっているのだから。
アレクセイ
「、、、、、、、、、ぁ、、、、っ、、、、キャサリー、、、その、、今のは、、、、」
アレクセイは立ち上がり、動揺した手つきで自分のポケットを探った。
デニス
「どうするんだ?」
デニスが腕を組んでアレクセイの背中に問いかける。
ユーリ
「、、、、、、、、、知らない」
ユーリは静かに席を立ち、窓の外の月面へ視線を移した。
アレクセイはキャサリーの傍らに寄り、ハンカチを取り出した。
彼女の頬に触れないよう慎重に、こぼれ落ちた涙の筋を吸い取る。
アレクセイ
「、、、、、泣くなよ、、、、母さんに怒られる、、、あの、、、だから、、その、、わかったよ、、助けるから、、その、、泣かないでくれ、、、、」
アレクセイは視線を泳がせながら、途切れ途切れに言葉を繋いだ。
その瞬間、キャサリーがアレクセイの体に勢いよく抱きついた。
キャサリー
「ありがとう!、、、アレクセイ!、、あの、、っ、、、良かった!!ありがとう!!」
アレクセイは両手を上げたまま硬直した。
ユーリ
「、、、、、、、はぁ、、、、、」
ユーリの深い溜息が船室の喧騒に混ざる。
デニス
「嫉妬か?」
デニスがニヤけ顔でユーリの横顔を覗き込んだ。
ユーリ
「、、、、、、違います」
ユーリは表情を変えず、ただアレクセイが背負い込んだ新たな重荷を見つめていた。
