42話:モテの極意

キャサリー

「あー、アレクセイ?」

背後からかけられた声に、アレクセイは飲み込もうとしていたサンドイッチを止めた。

アレクセイ

「何?」

キャサリー

「助けてください!お願いします!」

キャサリーは両手を胸の前で握りしめ、アレクセイの正面に回り込んで頭を下げた。

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、え、、、、、」

咀嚼が止まったまま、アレクセイは困惑を隠さず目を瞬かせた。

キャサリー

「さっきはその、、ごめん!!自分の事ばかり考えてた!でも、、あぁ、えと、このでもが良くないんだけど、、あの、、私には」

必死に言葉を繋ごうとするキャサリーの横で、デニスがユーリの肩を引き寄せた。

デニス

「なぁ、ここ俺らマチル団の船なんだけど、どういう事?」

デニスが小声で耳打ちする。

ユーリ

「緩い雰囲気なのが良くないんじゃないですか?」

ユーリが視線を向けた先では、外部の人間が必死に交渉しているにも関わらず、乗組員たちがポーカーのカードを配り、ゲームの電子音に興じていた。

デニス

「、、、、、、、それがうちの船だ!」

デニスは胸を張り、周囲の騒がしい日常を見渡した。

ユーリ

「そーですか」

キャサリー

「あの、、アレクセイ!、、、、、助けてほしい!私には武力がないわ!影響力もない!あるのはこの洗練されたスタイルと美貌だけ」

キャサリーはアレクセイの瞳を真っ直ぐに見つめ、自分に残された唯一の武器を提示した。

アレクセイ

「、、、、、、、、、む、、、それ辞めろ」

アレクセイの表情が強張り、手に持っていたサンドイッチを皿に放った。

キャサリー

「、、、、へ?、、、」

アレクセイ

「自分で自分を美しいって言うな、、、、ムカつくから、、、」

アレクセイは眉間に深いしわを寄せ、視線を逸らして吐き捨てた。

キャサリー

「それは、、、ごめん、、、、、」

言葉を失ったキャサリーの瞳にみるみる涙が溜まっていく。

学校という守られた枠組みの外で、自分の拠り所としてきた自負を真っ向から否定された衝撃に、彼女の肩が細かく震えた。

キャサリー

「ぁ、、、ぇと、、、ぅ、、、、、それ、、それで、、、、あの、、、」

言葉にならない声を漏らし、キャサリーは顔を伏せた。

当然だ、いくら18と16とはいえ学校で縛られた上下関係ではないのだ。 

自分のやる事なす事を否定されてしまっているのだから。

アレクセイ

「、、、、、、、、、ぁ、、、、っ、、、、キャサリー、、、その、、今のは、、、、」

アレクセイは立ち上がり、動揺した手つきで自分のポケットを探った。

デニス

「どうするんだ?」

デニスが腕を組んでアレクセイの背中に問いかける。

ユーリ

「、、、、、、、、、知らない」

ユーリは静かに席を立ち、窓の外の月面へ視線を移した。

アレクセイはキャサリーの傍らに寄り、ハンカチを取り出した。

彼女の頬に触れないよう慎重に、こぼれ落ちた涙の筋を吸い取る。

アレクセイ

「、、、、、泣くなよ、、、、母さんに怒られる、、、あの、、、だから、、その、、わかったよ、、助けるから、、その、、泣かないでくれ、、、、」

アレクセイは視線を泳がせながら、途切れ途切れに言葉を繋いだ。

その瞬間、キャサリーがアレクセイの体に勢いよく抱きついた。

キャサリー

「ありがとう!、、、アレクセイ!、、あの、、っ、、、良かった!!ありがとう!!」

アレクセイは両手を上げたまま硬直した。

ユーリ

「、、、、、、、はぁ、、、、、」

ユーリの深い溜息が船室の喧騒に混ざる。

デニス

「嫉妬か?」

デニスがニヤけ顔でユーリの横顔を覗き込んだ。

ユーリ

「、、、、、、違います」

ユーリは表情を変えず、ただアレクセイが背負い込んだ新たな重荷を見つめていた。

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