アレクセイの咆哮が、夕焼けに溶け始めた戦場を震わせていた。
漆黒に赤熱した機体は、アレクセイの剥き出しの神経と化した破壊の権化だった。
「セロニカは俺の友達だった!! セロニカは生きて帰るって話だったんだよ!!!」
その叫びと共に、リグマシーナギアが地を蹴る。
逃げ遅れたテロリストの機体を鷲掴みにし、重力と怒りを叩きつけるように、感情のまま地面に叩き伏せる。
ガァンガァンガァン!!
鋼鉄の腕が何度も往復し、敵機をただの歪んだ金属の塊へと変えていく。
アレクセイの瞳には、もはやモニターの数値も敵の陣形も映っていない。
そこにあるのは、失われたはずの笑顔と、奪われた時間の残滓だけだ。
「なんでお前らはそうやって外から人を殺せるんだよ!! いないんだろ!! この中に!!」
ガッッァアアアアアアン!!
左右から迫る二体の機体を、アレクセイはそれぞれ片手で掴み取った。
異常な出力がフレームを軋ませ、そのまま二機を激突させて押しつぶす。
挟まれたコックピットがひしゃげ、電子火花が散る。
「っ、、、友達だった、、初めて出来たんだよ、、この街で!!、、、初めて出来た友達だよ!! 俺の!!」
それは、天才と呼ばれ孤独を歩んできた彼が、ようやく手に入れた普通だった。
逃げ惑うテロリストたちが背を見せて離脱を図る。
だが、アレクセイの加速は彼らを逃さない。
手にした標識の支柱を、槍のように構えて突き出した。
加速の慣性をすべて乗せた一撃が、逃走する敵機の胸部を深々と貫く。
「どうして暴れられる!! どうして人を殺せる!! どうしてお前達はここで何人殺したんだよ!! ここでやる意味があったのかよ!!」
支柱を引き抜き、さらなる獲物を求めてアレクセイは暴れ狂う。
「死ねよ!死ね死ね死ね!どうせ遠隔なんだろ! 痛み感じないんだろ! だから出来ないんだろ!! なんで出来ないんだよ!! 人の痛みを!!! 人の感情を!!」
アレクセイの言葉は、破壊の音に混じって空虚に響く。
最後の一機。それはすでに交戦意思を失い、後ずさりながら武器を捨てていた。
だが、アレクセイの機体はその両肩を掴み、逃げ場を塞いで押し潰していく。
何事かを乞うように震えたスピーカーを、頭部のバルカンが無慈悲に粉砕した。
謝罪も、弁明も、最期の言葉も、アレクセイは一切を許さない。
静寂が、唐突に訪れた。 足元には、原型を留めない二十数機の残骸。
「、、、、、、、、、、、、、、、、はぁ、、はぁ、、っ、、、はぁ、、はぁ、、、ぅぅうう、、、、うううううううううああああああああああああああ」
それは慟哭か、剥き出しの感情か。過負荷に耐えかねた駆動音か、歯車の軋みか。
アレクセイの魂が、機械という器から溢れ出し、崩壊を告げるように響き渡る。
パタパタパタパタパタパタパタ
空気を切り裂くローターの音が聞こえる。
夕闇の空を背に、複数の軍用ヘリが急速に高度を下げてくる。
『ガンマ隊カルスレイグスト第一空挺部隊降下! そこのリグマシーナギア! 戦闘をやめなさい!』
スピーカーから響く威圧的な警告。
だが、その声はアレクセイの耳には届かない。
届くにはあまりにも遅い。
