漆黒の巨躯が、咆哮を上げる。
アレクセイの乗るリグマシーナギアがスラスターを噴かす。
青白い光がバックパックから爆ぜ、転倒したはずの機体を一瞬で加速させた。
漆黒の装甲が、大気を震わせる。
アレクセイがペダルを蹴り込むと同時に、背部のスラスターが青白いプラズマを更に吐き出した。
ドォッ、と腹に響く衝撃と共に、鋼鉄が慣性を無視して前進する。
迎撃しようと、テロリストの乗るリグマシーナギアは右腕のバルカンを発射する。
無数の火線が空を裂き、漆黒の装甲を叩く。
火花が散る。
迎撃の火線が漆黒の胸部を叩くが、アレクセイは瞬き一つしない。 避けもしない。
だが、アレクセイはそれに対して避けもせずそのまま殴る。
弾丸が跳ね返される。
カッ……カン!カン!カン!
ただ最短距離で突き出された拳が、敵機の放つ弾丸を力技で弾き飛ばしながら、そのメインセンサーを真っ向から粉砕した。
アレクセイ
「だあああ!!!!」
鋼鉄と鋼鉄が激突する、耳を潰すような衝撃音。
テロリストのリグマシーナギアのヘッドはそのまま凹み歪む。
センサー類が砕け散り、火花を吹く。
それだけでは終わらない。
鋼鉄がひしゃげる「グシャッ」という不快な感触が、操縦桿を通じてアレクセイの腕に伝わる。
止まらない。
怯む敵の懐へさらに踏み込み、左の重量脚をその膝へと叩きつけた。
メキィッ! 強固な合金が安っぽい空き缶のように折れ曲がる。
破損した脚で必死にスラスターを噴かし、重力から逃れようとする敵機。
逃がさない。
破壊する、という確かな意志が、鋭い駆動を生んでいた。
損傷した敵機が、たまらず逃げ場を求めてスラスターを噴かし上に逃げようとする。
重力から逃れようとするその動き。
だが、それを見越していたかのように、アレクセイのリグマシーナギアもスラスターを噴かし、最初に飛び立ったテロリストより上の位置を取りそのまま右手で掴み………
右手でそのヘッドを無造作に鷲掴みにし、噴射の全エネルギーを下へと叩きつける。
アレクセイ
「お前は!!感じないんだろ!!痛みが!!子供が居たのに!!あの子がいたのに!!あの中に居たのかよ!!お前らを苦しめた奴が!!」
地響きと共にコンクリートに沈んだ敵機。
その上に、アレクセイは叩き潰れたテロリグマシーナギアにマウントを取り殴り続ける。
一撃ごとに、モニター越しに伝わる衝撃。
アレクセイ
「なんであんな事した!!なんで!!!死ぬ様な人間が居たのか!!恨まれる人間が居たのか!!どうしてそう人を簡単に殺せるんだよ!!」
問いかけは、もはや会話を求めてはいなかった。
カチッ……キュリリリ!!
殴り続けられる無残な鉄塊の中から、異質な機械音が漏れた。
テロリグマシーナギアは唐突に右腕を上に上げ何かを打ち上げる。
空に消えていく信号弾のような光。
アレクセイは気にせず殴り続ける。
この世から消し去ることだけが、出来ることだったから。
アレクセイ
「お前は!!お前は!!!なんで!!なんで!!なんでだよ!!」
ー
ガラッ
凄まじい戦闘音の合間に、不自然な、しかし決定的な物音が聞こえた。
柱の影にいた少年が、首を傾げる。
ユーリ
「ん?、、、、、ぁ、、、」
ッカッカッカッカッカッカ
それは、どこか懐かしく、そして今この場所にあるはずのない音だった。
セロニカ
「なに?、、、これ、、なんの音?」
ユーリ
「時計?、、、、なんで?」
セロニカ
「、、、、、何、、、なんなの?、、、、」
ガラッ………ガラ……ガララララ
崩れた壁の隙間から、あるいは地下の通気口から、その音は近づいてくる。
テロリグマシーナギアがいた理由。
何故こんな人気のない所に居たのか。
理由は一つ、高い建物は全て破壊し、ここで軍と野戦を繰り広げる気だからだ。
破壊するのは遮蔽物が無くなるから無駄?
そんなことを考える知能があるのなら虐殺などしない。
カンッ
アレクセイ
「っ!?、、はぁ!??、、、ユーリ!!セロニカ!!」
異常を察知したアレクセイが叫ぶ。
だが、咆哮よりも早く、周囲に仕掛けられていた「死」がその牙を剥いた。
ガアアアアアアアアアアアアン!!!!!
