暗い線路。
足元に転がるバラストが、歩くたびにジャリ、ジャリと乾いた音を立てる。
アレクセイは魂をどこかに置き忘れたような足取りで、ただユーリの手に引かれるまま進んでいた。
ユーリ
「、、、、この先に一体何があるのかな、、、」
深い闇の先に視線をやり、ユーリが独り言のように呟く。
セロニカ
「ここ進んでどこにいくの?」
ユーリ
「アレクス、予定は?」
アレクセイ
「この先、港、船、」
アレクセイの声には抑揚がない。感情の死んだ、ただの音声データのような響き。
ユーリ
「わかった、、」
ユーリは何も言わず、その冷たくなったアレクセイの手を強く引きながら歩いていく。
セロニカ
「ねぇ、、アレクセイはどうしたの?」
後ろを歩くセロニカが、不安そうに二人の背中を見つめる。
ユーリ
「さぁ?、、、、アレクセイは目が良いからさ、、見たくないものも見えてしまうだけ」
高い知能も、鋭い視力も、この地獄においてはただの呪いでしかない。
沈黙が三人を包み込むのを恐れるように、セロニカは…
セロニカ
「、、、、、、そうなんだ、2人は幼馴染?」
ユーリ
「うん、6歳から一緒だね」
セロニカ
「へぇ、やっぱ地球って自然が豊富なの?火星って大規模農場ばっかで海とかないのよね、魚食べたことある?、私こっちきて初めて生魚食べたよ!」
ユーリ
「自然、まぁ豊富なんじゃない?セロニカは家族と離れて寂しくなかった?」
セロニカ
「うーんどうだろう?私3女だし、そこまでかなぁ?弟も妹も居るし」
無理に明るく振る舞うセロニカの声が、トンネル内に反響する。
ユーリ
「学園でやりたい事あった? 」
セロニカ
「やりたい事、うーん、、そうだなぁ、、イケメンと恋愛して玉の輿!じゃない?やっぱ!」
ユーリ
「ふふっ、、セロニカらしいや」
絶望的な状況に似つかわしくない、あまりにも俗っぽく、それでいて尊い願い。
セロニカ
「ユーリはやりたい事あったの?」
ユーリ
「、、,,,やりたい事か、、、ふ、、アレクセイが輝ける様にしたかったんだ、、」
セロニカ
「輝ける?」
ユーリ
「アレクセイは天才なんだよ、、ほんとに、、でもアレクセイはてんで子供でさ、、ずっと故郷が良いって言うんだ、、だから、、僕がいくから寂しいから来てって、、無理やりね、、コイツ成績一位なんだよ?」
セロニカ
「え?オーストラリアで?」
ユーリ
「さぁ?16歳から18歳なら全員無料だけど、試験があったでしょ?あれコイツ一位なんだ、、僕は13位、、、、ふっ、、、、馬鹿らしいね、、、こんな事なるなんて」
火星、地球、月。
あらゆるコロニーから天才、秀才が集まったはずのこの学園都市で、その頂点にいた少年の今の姿。
セロニカ
「アレクセイ、、、ねぇ、、アレクセイ、、私もアレクスって読んで良い?、、ユーリも、ユーニャって呼んでいい?、、ダメかな?、、なんか、、友達かな、、なぁんて、、だめかな?、、はは、、いやダメならダメでねぇ、、別に」
急
に心細くなったのか、セロニカは早口で言い訳を並べた。
昨日よりも、もっと深い「絆」を、彼女は求めていた。
ユーリ
「僕は良いよ、、、セロニカはなんて言って欲しい?」
セロニカ
「セっちゃんかな!アレクセイはダメ?」
二人の視線が、虚空を見つめるアレクセイに集まる。
アレクセイ
「ぇ、、ぁ、、、うん、、、、わかった、、っ、、セロニカ、、、」
セロニカ
「アレクス、、貴方はそういう所がモテないな、、絶対」
セロニカの毒づいたような一言に、ようやくアレクセイの瞳に微かな光が戻った。
ユーリ
「セッちゃん、、、、はは、、そういじめないでよアレクスを」
セロニカ
「うん、、ユーニャ、、、さぁ、、ここからどうなるんだろうね、、、」
運命は残酷だが…………この三人でなら
