暗い線路の奥から、アレクセイが戻ってくる。
ライトの逆光で顔はよく見えないが、近づくにつれてその表情が露わになった。
セロニカ
(ぁ、、、、アレクセイの頬、、、涙の跡、、、)
セロニカはそれを見逃さなかった。
先ほどまでの冷徹な鉄の仮面の下で、彼が何をしていたのかを。
だが、アレクセイは何事もなかったかのように、事務的なトーンで告げる。
アレクセイ
「朝6時になったら出発しよう、、俺は見張りするから3時間交代でユーリとやるからセロニカは寝ててくれ」
セロニカ
「ぁ、、っ、、、、ぁ、、、アレクセイ!」
備蓄庫から持ち出した毛布を広げようとするアレクセイを、セロニカは咄嗟に引き止める。
その声は、どこか切実だった。
セロニカ
「あ、、あたしさ、、やっぱさ、、、完全無敵の美少女様じゃない?」
場違いで、あまりにも突拍子もない一言。
アレクセイ
「、、、、、、で?」
アレクセイは動きを止めず、心底どうでもよさそうに短く返した。
セロニカ
「、、、、、、あの、、、さ、、イケメンじゃん?アレクセイとユーリってやっぱイケメン2人に囲まれて寝たいなー、、、あの、、なんて、、、はははー、、、」
アレクセイ
「、、見張りは要るよ、、何が来るかわかんない」
正論で切り捨てるアレクセイ。
だが、セロニカは引かなかった。
セロニカ
「、、、、、、、、あの、、私の願いがおかしいし、論理的じゃないし、馬鹿な事言ってるのはわかってる!!、でもさ、でもね、、だからこそさ、、アレクセイ、、、三人で寝ない?」
アレクセイが、助けを求めるようにユーリをチラりと見る。
しかし、ユーリはセロニカの意図と願いを、すでに分かっていた。
ユーリ
「ここは広いと言えど地下道だよ、ガスの充満は大変だよ、暖も取れないんだ、、アレクス」
もっともらしい理屈を並べる親友に、アレクセイは観念したように息を吐く。
アレクセイ
「グルかよ、、、」
セロニカは逃がさないと言わんばかりにアレクセイの腕を引っ張り、ユーリの元に駆け寄った。
冷たい壁を背に、セロニカを真ん中に挟み込むような形で、三人は互いの体温を感じる距離で座り込む。
セロニカ
「えっちな事する?」
アレクセイ
「やっぱ1人で寝る!」
セロニカ
「わ、、ちょちょちょちょ!今の嘘!嘘だから!、待っててばぁ」
アレクセイ
「はぁ、、、、」
アレクセイが呆れ果てて腰を下ろすと、セロニカはようやく安堵したように小さく笑った。
セロニカ
「ふふ、なんか修学旅行みたい!、、、こんなイケメン達と寝れてラッキー!、、、、こんな状況で、、、会いたくなかったな、、、」
ユーリ
「、、、、寝よう、、セロニカ、、、、起きてると不安で潰されるよ」
セロニカ
「、、、、ぅん、、、ユーリ、、、、、、、アレクセイもうちょっと詰めて、隙間あってさぶい、、」
アレクセイ
「わかったよ」
文句を言いながらも、アレクセイは静かに肩を寄せた。
地上では今も黒煙が上がっているだろう。
無機質な暴力が吹き荒れているだろう。
けれど、この深い地下の片隅で、アレクセイ、ユーリ、セロニカの三人は一つの団子のようにまとまり、深い眠りへと落ちていく。
唯一の灯りは、床に置かれた黄色く淡い電気トーチのみ。
あぁ、やっと一息つけた。
