11話:自然と人為。害ならどちらも違いはない

崩れ落ちるビルの断末魔が響き、灰色の粉塵が視界を遮る。

かつての学生達の街は、今や巨大な墓標の群れへと成り果てていた。

その地獄の様相の中を、三人の影が駆ける。

アレクセイの脳内には、網膜に焼き付いた都市図と先ほどの血。

アレクセイ

(こっち、、はダメだ、、この振動、、、もうすぐくる)

セロニカ

「はぁ、、はぁ、、ね、、ねえ!!どこ向かってんの!!」

肺を焼くような熱い空気を吸い込みながら、セロニカが悲鳴に近い声を上げる。

アレクセイ

「わかんない、、でも生きれるとこ、、、」

ユーリ

「アレクセイ!君を信じて生きれる可能性ある?」

アレクセイ

「ない、、、ないよ、、でも、、でもだからって何もしないのは、、無理だろ、、地下鉄道があったはずだよ、、、、そこから外へ出ようと思う」

セロニカ

「地下鉄?、、ならこっちが近道!」

アレクセイ

「そっちはダメ!」

アレクセイが強引にセロニカの腕を掴み、ユーリに投げわたす。

同時にユーリへ鋭いハンドサインを出し、崩れかけの外壁の隙間――暗い路地裏へと滑り込み、三人は石壁に背を預けて息を殺した。

ユーリは震えるセロニカを落ち着ける様に抱きしめる。

アレクセイの目に映る機械は物語の死神よりも恐ろしい何かにしか見えなかった。

直後、石畳を震わせる重厚な足音が近づいてくる。

ドォン、ドォン、ドォン

鉄の巨人が、獲物を探す獣のように路地の入り口を通り過ぎていく。

「聖別の火」のリグマシーナギアだ。

ただのテロリストがここまで街を蹂躙する意味はあるか。

あぁ、あるのだ。

この学園都市アカデムグロードは、この世界で唯一の絶対的平和中立圏。

どんなテロ組織も軍も、皇帝でさえおいそれと手を出せない権威の場所であったからこそ、ここを汚すことには世界の理を壊すという狂った価値が宿る。

あまりにも愚かしいほどに思考を放棄した、権力に取り憑かれた強者から、より強い強者への妬みの発露。

足音が遠のくのを待ち、アレクセイがゆっくりと手を引いて、ユーリとセロニカを促し足音を立てずにその場を去っていく。

アレクセイ

「ユーニャ、、セロニカ、、、、多分こっちなら大丈夫」

ユーリ

「うん、、わかったアレクス」

先行するアレクセイの背中を見つめながら、セロニカが隣を走るユーリの肩を小突いた。

セロニカ

「ね、ねぇ、、ユーリ、、なんか、、アレクセイ、、良いの?大丈夫なの?」

ユーリ

「、、、、、さぁ、、わかんないよ、、でも、、セロニカ、、、、その、、、さっき胸触って、、ごめん、、隠れた時、、、」

セロニカ

「は!?、、それ今言う!?、、、信じらんない!」

アレクセイ

「静かにして!」

ユーリ、セロニカ

「ご、、ごめん、、、、、、、」

死の淵にあるというのに、あまりにも場違いで、あまりにも子供じみたやり取り。

けれど、その滑稽さが張り詰めすぎた神経をわずかに緩ませた。

セロニカ

「ふ、、ふふ、、」

ユーリ

「セロニカ、、流石に笑うのは、、ふふ、、、ふっ、、はは、、」

抑えきれない笑いが漏れる二人を見て、アレクセイが苛立ちと安堵が混ざった仕草で頭をかいた。

アレクセイ

「、、、、、あぁもう、、、、」

アレクセイは自分の頬を強く叩き、澱んだ思考を強制的に再起動させる。

「、、チッ、、、、、はぁ、、、、行くよ!」

絶望に塗りつぶされた都市で、抗う術を持たない少年少女たちの都市脱出が始まった。

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