学園都市の喧騒から少し離れた一角に、その学生マンションはあった。
白を基調とした外壁に、最新のセキュリティデバイスが埋め込まれたエントランス。
清潔感と機能美を兼ね備えた佇まいだ。
受付カウンターでは、いかにも面倒見の良さそうな柔和な笑みを浮かべた女性が、二人の少年に鍵を手渡した。
寮母
「ユーリ・カザニヤフさんに、アレクセイ・ミラーさんですね、はい。登録があります。お部屋は二人で一部屋になりますからご承知をお願いします」
ユーリ
「はい、わかりました、ありがとうございます」
ユーリが丁寧に応じる傍らで、アレクセイは手元のスマートウォッチに意識を向けたまま、気のない返声を漏らす。
アレクセイ
「ふぅん、、まぁまぁ?」
案内された部屋の扉を開けると、そこにはいかにも、これから始まる輝かしい学生生活を予感させる、小綺麗に整えられた空間が広がっていた。
アレクセイ達は、まだ解かれていない荷物を玄関先に放り出したまま、自分たちの城となる部屋の物色を始める。
アレクセイ
「、、、キッチンは普通のだね」
ユーリ
「二人暮らしだねこれ、、まぁ仕方ないか、、僕らの街お金無いから」
アレクセイ
「これでも街の成績一位と二位なのにね、、世知辛い世の中だなぁ〜」
不平を言いつつも、アレクセイの足取りはどこか軽い。
ユーリ
「まぁ、ベッドのクッションは良い感じだし、シャワーとトイレ別だから良いんじゃ無い?」
アレクセイ
「お風呂ないのかぁ、、冷蔵庫は割と大きいね、、」
ユーリ
「にしてもそこそこの部屋だね、、、もう、、、」
文句を言いながらも楽しげなアレクセイに、ユーリは苦笑混じりの溜息をつく。
アレクセイが手首のスマートウォッチを軽く叩くと、空中に青白いホログラムが浮かび上がった。
学園専用のポータルサイトが展開され、さまざまな情報が流れていく。
アレクセイ
「ふぅん、、成績によって学生がやる商店ならそれで売り買い出来るみたいだよ」
ユーリ
「へぇ〜、、何でお金貰えるのかな?」
アレクセイ
「テストの成績と、学期成績と、あとはなんかの大会とか? 」
能力がそのまま価値となる、閉ざされた楽園の経済圏。
ユーリが横からホログラムを操作し、ランキングのページをスクロールさせていくと、ある項目で指が止まった。
ユーリ
「あ!これアレクセイがなんか一位だったやつじゃん!」
アレクセイ
「あれは別にそんなじゃないよ、2000万人くらいしか居ない過疎ってるゲームだもん、マイナーだよマイナー」
だが、ユーリの瞳には尊敬の色が浮かんでいる。
ユーリ
「えぇーでもあるって事は凄いんじゃない?やってみようよ」
アレクセイ
「はぁそれは良いけど、、これご飯が付いてない契約だから買い出し行かないと」
ユーリ
「分かったよ、」
これから始まる三年間の、なんてことのない最初の一歩。
荷解きもほどほどに、アレクセイとユーリは最低限の荷物を身につけて買い出しに行く。
夕暮れ時の穏やかな風に吹かれながら、二人はマンションを後にした。
