1話:飛行機の中

電子音でんしおんが、密閉みっぺいされた機内きないに無機質むきしつに響ひびく。

ピー…………ピピ………デェンテデンレンテー………!

『おめでとう!君きみの勝利しょうりだ!』  

画面がめんの中では派手はでなエフェクトが舞まっているが、それを見みつめる少年しょうねんの瞳ひとみには、達成感たっせいかんの欠片かけらも宿やどっていない。

 「、、、、、、、、、、飽あきたなぁ、、」  

黒くろい髪色かみいろをした少年しょうねんは、深ふかく座席ざせきに背せを預あずけたまま、独ひとり言ごとのように呟つぶやいた。

「このゲーム過疎かそってきたなぁ、、、、別べつのゲーム行いこ、、」  

慣なれた手てつきで携帯用けいたいようゲーム機き『アリウス』の画面がめんをスライドさせ、データの海うみから次つぎの暇潰ひまつぶしを探さがし出だす。

周囲しゅういの乗客じょうきゃくが旅たびの終おわりに浮うき足立あしだつ中なかで、彼かれだけが切きり離はなされた停滞ていたいの中なかにいた。

 「やっぱ選択系せんたくけいのゲームだよな、、、、コマンド式しきの方ほうが自由じゆうだな、、反応はんのうが遅おそいんだよなぁ、、」  

指先ゆびさきの動うごきにシステムが追おいついていない。

その微かすかな苛立いらだちを拾ひろうように、すぐ隣となりから高たかい声こえが響ひびいた。

 「なぁ、アレクス、良いい加減かげんゲーム辞やめたらどうなの?あと1時間じかんで学園がくえんにつくんだよ、せっかく景色けしきが良いいのにさ!」  

隣人りんじんの声こえ、その眼差まなざしには隣となりに座すわる少年しょうねんへの隠かくしきれない世話焼せわやきな性質せいしつが滲にじんでいる。

アレクス

「うるさいユーニャ、、そもそも最新さいしんの飛行機ひこうきがある癖くせにわざわざ旧式きゅうしきで運行うんこうしてるこの飛行機ひこうきに問題もんだいがあるんだろ?13時間じかんだぞ!13時間じかん!暇ひまなんだこっちは!」  

アレクスは顔かおを上げず、吐はき捨すてるように言いった。  

ユーニャ

「!、、アレクセイ、、静しずかにしてよ、、みんながこっち見みるじゃないか!」  

慌あわてて周囲しゅういを伺うかがうユーニャの焦燥しょうそうを、アレクセイは鼻はなで笑わらう。

アレクセイ

「、、、、、、、、、知しらないよ、、、」  

冷淡れいたんな一言ひとことと共ともに、彼かれはふたたびゲーム機きの中なかへ引ひきこもった。

 『まもなく着陸体制ちゃくりくたいせいに入はいります。シートベルトを締しめ、座席ざせきの背せもたれ・テーブルを元もとの位置いちにお戻もどしください。』  

機内きないアナウンスが流ながれ、いよいよ逃にげ場ばのない現実げんじつが近ちかづいてくる。

アレクセイ

「、、、、、、、はぁ、、、、なんで学園がくえんになんていかなきゃいけないんだ」

ユーニャ

「成績一位せいせきいちいの君きみが行いかなかったらどうするんだよ、中学ちゅうがくの先生せんせいも困こまっちゃうって」

 自分じぶんは凡庸ぼんような努力どりょくの積つみ重かさねで隣となりへの切符きっぷを掴つかんだというのに、隣となりの少年しょうねんはゲームに興きょうじながら、その椅子いすを軽々かるがると奪うばい去さっている。

ユーニャの言葉ことばには、感嘆かんたんと、それ以上いじょうの昏くらい執着しゅうちゃくが混まざっていた。

だが、アレクセイはそんなユーニャの内心ないしんなど興味きょうみがないと言いわんばかりに、アリウスをポケットにねじ込こんだ。

アレクセイ

「、、、、、、、、、、、、寝ねる、、、、着ついたら起おこして」

ユーニャ

「、、、、わかったよ、、」  

しぶしぶながらも、ユーニャの声こえには安堵あんどの色いろが混まじる。

眠ねむっている間あいだだけは、この天才てんさいが自分じぶんの中なかで、無垢むくな子供こどものように自分じぶんを頼たよっているからだ。    

重苦おもくるしいエンジンの振動しんどうを子守唄こもりうたに、アレクセイは深ふかい眠ねむりへと落おちていく。

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