89話:往来

「?、、、なんなの?、、、この感覚、、、ゼンシアの共鳴?、、うそ、、ここに?、、ありえない」

とある少女はフードを深く被り、人混みを縫うように歩調を速めた。首を左右に振り、雑踏の隙間から何かの気配を追う。

ユーリ

「、、、、マチルさん、、これから僕らをどうするんです」

ユーリは背後の気配を気にしながら、隣を歩くマチルの顔を覗き込んだ。

マチル

「情報統制も始まったからコロニーをあと三つほど経由して火星に、火星で物資を補給したあと一直線で地球に帰る」

マチルは前方を凝視したまま、淡々と予定を口にした。

ユーリ

「、、、、、、手際がよすぎませんか」

マチル

「ま、、、こんな生活ももう20年もしてるからな」

マチルはポケットから端末を取り出し、時刻を確認した。

ユーリ

「、、、、、、、、、にじゅ、、、うねん、、、」

ユーリは足を止め、マチルの背中を見つめた。

マチル

「さぁな」

「ぁう!」

前方で短い叫び声が上がった。フードを被った少女が、体格のいい男の胸元に突き当たり、そのまま尻餅をつく。

「あ?どこ見てんだよ!気をつけて歩け!」

男は少女を見下ろし、声を荒らげた。

ユーリ

「ちょっと!それは無いんじゃないですか!」

ユーリが間に入り、倒れた少女を背に隠した。

「あ?前見てねぇコイツが悪りぃだろうがよ!」

ユーリ

「貴方はアイズばっか見てたでしょう」

ユーリは男の眼球、その表面で発光する情報の残像を指差した。

「それの何が悪いんだよ!」

ユーリ

「歩きながらの操作して前を見てなかったのは貴方でしょう!」

マチル

「(コイツ、、、、、はぁ、、、、、)」

マチルは額に手を当て、空を仰いだ。

「うるっせぇな!」

男は腕を振り上げ、ユーリの顔面目掛けて拳を放った。

パチッ!

ユーリは男の腕を空中で掴み取った。そのまま手首を返し、男の体を地面へと組み伏せる。

少女

「(今の!この人から出てた!)」

倒れ込んだままの少女は、ユーリの背中を凝視し、息を呑んだ。

憲兵

「こら!そこ辞めなさい!往来での暴力沙汰は犯罪だぞ!」

遠くから警笛が鳴り、制服を着た数人がこちらへ駆け寄ってくる。

マチル

「チッ、、はぁ、」

マチルは舌打ちをし、ユーリの首根っこを掴み上げた。そのまま抵抗する間も与えず、人混みの奥へと引きずっていった。

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