52話:キャンディは安物じゃなかったがな!

マチル

「27分、、、あと33分か、、、」

艦長室の壁にかけられた時計の針を睨み、マチルは短く吐き出した。

作戦開始から刻まれた時間は、計画の半分を過ぎようとしている。

ピピッ

静寂を破り、コンソールから電子音が跳ねた。空中にデニスの顔がホログラムとして投影される。背景には、火花を散らし沈黙した敵のリグマシーナギアが映り込んでいた。

デニス

「3機鹵獲出来ましたよ、、追加でもう3機鹵獲出来そうですけどどうします?」

マチル

「ふぅむ、、、、」

マチルは考え込むように、机の端を人差し指で一定のリズムで叩き始めた。

トンッ……………トン……………トン…………

硬質な音が室内に響く。彼女は戦場の推移を脳内で再構成し、決断を下す。

マチル

「いや、、良い、、残しておけ、、、3機で十分だ」

デニス

「了解です」

通信が切れる。マチルは椅子の背もたれに深く体重を預け、天井を見上げて眉を寄せた。

マチル

「ふぅむ、、、どうしたもんかなぁ、、思ったより弱すぎる、、、、」

領主の私兵たちのあまりの練度の低さに、彼女は言いようのない不気味さを感じていた。

その思考を遮るように、扉が開き、ラジェシュが慌ただしく駆け込んできた。

ラジェシュ

「報告です、アレクセイ、ユーリに与えた部屋からキャサリー含め3人が居ません、、、、どうしましょ」

マチル

「、、、、、、なに?」

指の動きが止まる。マチルは聞き間違いを疑うようにラジェシュを見据えた。

ラジェシュ

「え?だから子供が逃げ出しました」

マチル

「、、、、、、、、、、、、なに、、、、、」

ラジェシュ

「え?」

マチル

「え?」

ラジェシュ

「逃げちゃった」

数秒の沈黙。マチルの表情が、驚愕から怒りへと塗り替えられていく。

マチル

「逃げちゃっ、、、、、た?、、、え?」

ラジェシュ

「いやぁ、、、子供って凄いっすね」

どこか他人事のようなラジェシュの言葉に、マチルが机を叩いて立ち上がった。

マチル

「いやちょちょちょ、、、今作戦中!え!?ケナロスは!?シェルフは!?おい!」

ラジェシュ

「あー、、、なんか監視カメラ見たら頑張れって手振ってましたね」

マチル

「アイツら酒禁止!!!また酒飲んでただろ!!??」

マチルの絶叫が艦長室に木霊する。

ラジェシュ

「いやぁ、、、、まぁ、、、仕方ないっすねぇ、、、どうします?」

マチル

「ラジェシュ!!ケナロスとシェルフ連れて戻ってこい!!アイツらというかアレクセイとユーリは私らより上の重要指名手配犯だぞ!?しかも冤罪の!馬鹿!!早く行け!!」

ラジェシュ

「はい!了解です!」

マチルの怒声に背中を叩かれ、ラジェシュは弾かれたように部屋を飛び出していった。

廊下を走りながら、彼は即座に通信機を起動させる。

ピピッ

ラジェシュ

「おい!!ケナロス!シェルフ!!報告した俺が怒られたんだけど!!これ連帯責任で俺も食らうんじゃねぇの!?」

通信の向こう側からは、バツの悪そうな、しかしどこか抜けた声が返ってきた。

ケナロス

「いやだって、、、子供を閉じ込めるのは、、真剣に頼まれたんだ、、断れないだろ」

シェルフ

「、、、、、いやぁ、、、あのキャンディーはコニャックの合うんだよ、、渡されたらなぁ」

ラジェシュ

(嵌められた、、、、マチル艦長、、、最初から逃がす気でしたね、、、、めんどくさいなぁもう!!)

上司の不器用な思いやりの尻拭いをさせられている事実に内心で毒づきながら、ラジェシュは鋭く指示を飛ばした。

ラジェシュ

「、、、、、、だぁ!行くんだよ!!電磁バイクを用意しておけ、兵装は戦闘配備3型、要人警護を目的とする!」

ケナロス、シェルフ

「了解」

格納庫へ向かう彼らの足音が、作戦開始以来、最も慌ただしく響き始めた。

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