オンバス
「行くぞ!!!!!」
その短く鋭い呼気とともに、オンバスは一切の躊躇なく闇へと踏み出した。
少し離れた物陰、重なり合うように身を潜めたアレクセイ、ユーリ、キャサリーの三人は、その背中を呆然と見送る。
アレクセイ
「ぇ、、、あの人1人で侵入するの?、、、、というかなんで今叫んだんだろう」
ユーリ
「実働隊長って言ってたよね、、、部下居ない、、、」
キャサリー
「大丈夫なのかしらあの人」
懸念をよそに、オンバスは手慣れた動作で銃を引き抜き、シリンダーの弾丸を無機質な音を立てて確認する。
スマートウォッチからホログラムの地図を展開し、最短ルートを網膜に焼き付けると、彼は人口森林の密度が最も濃い箇所を音もなく抜けて屋敷の敷地内へと潜り込んでいく。
その後を追うように、三人もまた屋敷の全貌が拝める位置まで移動した。
アレクセイ
「、、、、、ゎ、、、悪趣味、、、」
ユーリ
「センスないなぁ」
キャサリー
「近くで見たの初めてだけどこんな感じなんだ、、、、アシンメトリーって言えば芸術って思ってそうな家ね」
月の光を不自然に反射する屋敷の異形な造形に、三人は一様に顔をしかめる。
ユーリ
「裏口から入るのかな?」
アレクセイ
「流石にそうでしょ」
だが、その予測は直後に響いた荒々しい声によって、最悪の形で裏切られることになった。
ハジコの軍兵
「きさま何者だ!」
オンバス
「遅い!撃ってから尋問するのが衛兵の役目だぞ!」
潜入という言葉を嘲笑うかのような怒号。
オンバスは足元の石を拾うなり、正面から守衛の顔面へと叩きつけた。
怯んだ隙を逃さず、肉薄。銃床を凄まじいスイングで守衛の顎へと振り抜く。
キャサリー
「しょ、、、正面から行っちゃった、、、、」
ユーリ
「、、お、、追わなきゃ、、僕なら、、、」
ユーリが身を乗り出す。
アレクセイ
「、、、、、、、、、え、、でも危ないだろ」
アレクセイがその袖を引くが、キャサリーが祈るような瞳で彼を見つめた。
キャサリー
「でもこれじゃ、ハジコがマチルに変わるだけで次の領主がまともとは限らないの、、お願いアレクセイ、、、」
アレクセイは一度だけ天を仰ぎ、短く吐き出した。
アレクセイ
「、、、、、、、、わかったよ、、、」
三人は互いに視線を交わすと、混乱の渦中へと突き進むオンバスの背中を追い、死の気配が漂い始めた屋敷へと深く侵入していった。
