13話:アドレナリンは人を冷静に。

蹴破った扉の先には、どこまでも続く無機質な闇が横たわっていた。

アレクセイの掲げるライトが、埃の舞う冷たい空間を切り裂く。

アレクセイ

 「、、、、、、、、、これ、、線路か」

ユーリ

「続いてるね、、どっちにいくべき、、、か、、」

二条の鉄路が、暗闇の奥へと吸い込まれている。

地上の地獄から切り離されたこの場所は、死んだように静まり返っていた。

セロニカ

「ならホログラムでマップ出せば良いじゃない?」

ユーリ

 「電波探知くらいするでしょ、、彼らの要求が結局なんなのかわかんないんだから、、ただの虐殺だよ、、あんなの」

ユーリの懸念はもっともだった。

高度に管理されたこの街では、ネットワークへの接続そのものがここにいるという位置情報を敵に差し出すことになりかねない。

セロニカ

 「、、でも、、じゃあ」

セロニカが言いかけるより早く、アレクセイが自分の腕からスマートウォッチを引き剥がした。

ガン!!!

迷いのない一撃。

アレクセイは精密機器を壁に叩きつけて粉砕した。

アレクセイがその残骸から何かを見つけ、近くの漏れ出す水を近くの投げ捨てられたヘルメットに水を溜め始める。

アレクセイ

「、、、20分くらいかな?」

ユーリ

 「方位磁針?アレクス」

アレクセイ

「そう、見ればわかるでしょ、、緊急時の貯蓄がこの辺にあるはず」

アレクセイが壁をぺたぺたと触っていく。

セロニカ

 「なんでそんなの知ってんの?」

即席のコンパスに染み出す水が溜まるのを見つめながらアレクセイは当然のように言い放つ。

アレクセイ

 「教科書に書いてあったでしょ、小学生の時の、震災用に閉じ込めれた時の設備があるって」

知識を知識のまま腐らせず、極限状態で道具として再構成する。

その異常なまでの生存本能に、セロニカは言葉を失う。

一方で、ユーリもまたスマートウォッチの光を波長の長いブルーライトへと切り替え、注意深く周囲を照らす。

ユーリ

 「アレクス、、、、ライト消して」

アレクセイ

 「ん、、、おけ」

光を吸い込むような青い影の中で、ユーリは壁面に残された微かな摩擦痕や、過去に人が触れたであろう皮脂の跡を、鑑識官のような手つきで辿っていく。

指先が、壁の継ぎ目にある不可解な突起を捉えた。

ユーリは微かな指紋や人間の痕跡を辿り壁に隠されていたスイッチを押す。

ガガガガガガガガ

重厚な石壁がスライドし、その奥に整然と並んだ緊急用の備蓄品と、旧式のサバイバル装備が姿を現した。

セロニカ

「、、、えぇ、、、さすがに、、ドン引き、、、これがAクラスってことぉ?」

ユーリ

「セロニカは何クラスだったの?」

セロニカ

 「、、、、D、、よ、、仕方ないじゃない!そんな、小学校の時聞いてなかったし!」

あまりのスペックの差を見せつけられ、セロニカは肩を落として唇を尖らせる。

しかし、アレクセイは棚から保存食を取り出しながら、不意に彼女の方を向いた。

アレクセイ

 「ふぅん、、、まぁ良いんじゃない?、、セロニカが引っ張ってくれなかったら俺ここまで生きれてこれてないし」

ユーリ

 「そうだね、、休もっかちょっと」

アレクセイの言葉は、慰めではなく純然たる事実としての評価だった。

それが逆に、セロニカの頑なな心を不意に解いてしまう。

セロニカ

 「ぐ、、ぬぬぬ、、なんか人間出来過ぎててやりづらいわアンタら、そこはもっとこう私みたいな女が居るのよ!密室に男女三人、、これは、、もう、、、それでしょ!あれでしょ!えっちなやつでしょ!」

極限状態のストレスから解放された反動か、彼女は顔を赤くしながら、必死にいつもの自分のノリを演じてみせる。

アレクセイ

 「、、、、、、、、この状況でそれを言える君に俺はドン引きだよ、、、」

ユーリ

「、、、、ぇ、、あ///、、、そういうのは良くないんじゃないかな!?? 」

アレクセイの氷のような一瞥に対し、対照的にユーリは年相応に顔を真っ赤にして狼狽える。

セロニカ

「アレクセイは人間味なさすぎ!ユーリは照れるな!、、もう//////」

暗い地下道に、場違いで、けれどどこか温かい声が響く。

外の世界では今も虐殺が続いている。

それでも三人は、冷たいコンクリートの上で肩を寄せ合い、束の間の休息へとその身を委ねた。

ユーリ
(、、、、、、、、、、、ゎ////)

セロニカ

(ぐぉぉぉぉおおなぜ私は今あんなことをおお!!!ユーリのが反応するの!?いや、、いや、、、いやいやいやいや//////)

アレクセイ
(、、、、、、、なんでこの二人こんな顔赤いんだよ、気まずいわ)

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